臨床判断(直感)による転倒予測精度が高い理学療法士の視点とその構造:─通所リハビリ利用高齢者9名の映像評価による前向き研究─  [in Japanese]

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<p>【はじめに】</p><p>Haines ら(2007)が行った系統的レビューとメタ分析において,転倒予測における看護師のClinical Judgment(以下「臨床判断」。同義語「直感」)の有用性が報告されている。しかし,理学療法士(以下,PT)に関する先行研究は少ない。我々は,第3 回日本予防理学療法学会サテライト集会にて,PT の臨床判断による転倒予測妥当性が,既存の評価法より良好であること,また高い予測精度には,急性期の勤務経験を積むことと,5 年以上の臨床経験を積むことが関連する可能性を示唆した。本研究は,臨床判断(直感)による転倒予測精度が高いPT の臨床判断の視点と構造を明らかにすることを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は関東5 県,計24 施設で勤務しているPT,計169 名。通所リハビリ利用高齢者9 名をモデルとし,会話・移動場面を題材とした映像を作製した。対象PT は映像観察後,半年以内に転倒するリスクの有無を評価した。また判断根拠についてインタビューを行い,IC レコーダーで録音した。なお,高齢者については映像撮影後6 カ月間転倒発生状況を追跡した。9 名の高齢者に対する対象PT の転倒予測の結果から,予測精度の成績上位群と成績下位群に分類した。インタビュー内容は,逐語録を作成後,KH Coder(Ver.2)を用いた計量テキスト分析を行った。成績上位群と下位群毎に共起ネットワーク分析を行い,出現パターンの傾向を分析した。共起関係の分析はJaccard 係数が0.1 以上の語句を使用した。またコンコーダンス機能を用いて文脈を補足しながら文章化した後,サブグループ毎に命名した。</p><p>【倫理】</p><p>本研究は,筑波大学人間系研究倫理委員会の承認を得て実施した(課題番号第東28-11 号)。研究の目的・趣旨を説明して同意を得た者を対象とした。</p><p>【結果】</p><p>成績上位群の共起ネットワークを作図した結果,13 個のサブグループが示された。①【全ての動作相[起立・着座・歩行・方向転換]における全体像[スムーズさ,安定性,痛み,歩容,歩行補助具の使用状況]】,②【起立・着座動作の観察から推察された下肢筋力低下】,③【疾患に起因する異常な体幹の動揺性】,④【歩行中のクリアランス保持の異常】,⑤【動作や会話場面の観察から推察された性急な様子】,⑥【手への注目の視点[手に現れた症状,代償としての使用]】,⑦【観察された不良姿勢から推察される体幹機能】,⑧【麻痺側足部の障害】,⑨【不安定な立脚期】,⑩【話を聞く様子から推察された認知機能や性格】,⑪【疾患による動作と生活への影響】,⑫【面談の時点での覚醒レベル】,⑬【動作場面から推察された注意力の散漫さ】。</p><p>【考察】</p><p>成績上位群の判断根拠の特徴として,多様な場面から得た多くの情報を根拠とすること,身体のより細かな動きの要素を捉える動作観察の視点を有すること,転倒リスクに直結する視点を明確に持っていること,覚醒レベル,注意・認知機能,性格をリスクの判断材料に用いることが挙げられた。また,その観察にとどまらず,それを判断材料として,機能の推測,原因の推察,場面や環境など空間が変化した時の想定,病状進行など時間軸の中での予後予測など,多様な思考過程を経て判断を行っていた。</p><p>【結論】</p><p>予測精度の高い臨床判断は,質・量共に十分な情報収集と,その情報の適切な解釈,また転倒リスクに関連する因子の適切な抽出からなされていた。今後は成績上位群で確認されたPT の暗黙知を形式知化した教材の作成と,教育場面での活用により,経験の少ないPT の臨床判断(直感)による転倒予測精度向上に寄与できるか検証する必要がある。</p>

Journal

  • Congress of the Japanese Physical Therapy Association

    Congress of the Japanese Physical Therapy Association 46S1(0), D-23-D-23, 2019

    JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION

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