Virtual Reality Systemを用いたトレッドミル歩行下でのExtrapersonal Neglectの評価

DOI
  • 田村 正樹
    神戸大学大学院保健学研究科 朝日医療大学校理学療法学科
  • 白川 真
    神戸大学大学院システム情報学研究科
  • 羅 志偉
    神戸大学大学院システム情報学研究科
  • 種村 留美
    神戸大学大学院保健学研究科

書誌事項

タイトル別名
  • -Pilot Studyによる無視の質的特徴-

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>半側空間無視の無視空間は身体,身体周囲,身体外に分類されるが(Buxbaum,2004),中でも身体外の無視(Extrapersonal Neglect:EN)の重症度が高いと報告されている(Butler,2004).理学療法場面で用いるENの評価の一つとして,Catherine Bergego Scale(CBS)の歩行関連項目が挙げられるが,歩行時は環境が随時異なるため,見落とした物体の質的特徴の精査が困難である.今回,Virtual Reality System(VR)を用いた歩行下での視覚探索課題を開発した.検査の特徴と無視症例1名の評価結果を以下に報告する.</p><p>【方法】</p><p>Head Mounted DisplayはOculus Riftを用い,VR映像はUnityによって作製した.トレッドミルはW-6DX,転倒防止のために免荷機能付歩行器であるAll in one,歩行速度を調整する目的でKinectと直流安定化電源PSS-3203型を用いた.また,VR課題の正誤を判定するために音声認識フリーソフトであるJuliusと音声入力機器であるマイクを導入した.VR課題は屋外歩行場面を想定しており,計18個の標的(総得点18点)からなる.各標的で特性が全て異なり,出現位置(前方,側方),出現刺激(右側,左側,両側),刺激の種類(静的,動的,不規則)の3要素の組み合わせで質的特徴を分類した.VR課題時は手すりを右手で把持した快適歩行速度下で実施し,発声により認識を評価した.高齢健常群3名(平均年齢72.0±2.0歳)によるVR課題の総得点の平均は17.3/18点であった.症例は70歳代,男性,右利き,診断名は右脳出血(側頭葉,後頭葉),Fugl-Meyer Assessment(左下肢)は32/34点,Behavioral Inattention Testは通常検査が117/146点,行動検査は65/81点,CBSは歩行関連項目の「左側への衝突」と「左側へ曲がることの困難」の観察評価が2/3点,病態失認は1/3点,10m歩行速度は9.8秒,Mini-Mental State Examinationは27/30点,対座法では左同名半盲が確認された.</p><p>【結果】</p><p>VR課題の総得点は10.5/18点であり,見落とした標的数は右側2個,左側7個であった.見落としの内訳は,出現位置では前方30.0%(3/10個),側方75.0%(6/8個)であり,側方において見落とし率が著明に高かった.出現刺激の比較では,右側28.6%(2/7個),左側57.1%(4/7個),両側75.0%(3/4個)であり,両側刺激の見落とし率が最も高く,その際は左側の消去現象が75.0%(3/4個)の確率で確認された.刺激の種類の比較では,静的50.0%(4/8個),動的83.3%(5/6個),不規則0%(0/4個)であり,動的刺激で最も見落とし率が高かった.</p><p>【考察】</p><p>無視患者は水平移動距離が有意に乏しく(Butler,2009),無視患者に両側刺激を与えると最も右側を注視し,“まるで磁気のように”注意が引きつけられると報告されている(Gainotti,1991).さらに,動的刺激の見落としに関しては,腹側注意ネットワーク(側頭葉,頭頂葉-前頭葉の機能的連結)による受動的注意(Vossel,2014)の障害により,著明に生じたと考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究の実施に関しては,神戸大学大学院保健学研究科倫理委員会の承認を得ている.本研究の参加に関しては,対象者とその家族に研究の目的や方法,個人情報の取り扱い等を口頭と文書で説明し,同意を得ている.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-140_1-E-140_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087534080
  • NII論文ID
    130007692946
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-140_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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