脳卒中片麻痺患者に対するBrain- Machine Interfaceを用いたリハビリテーションがF波に及ぼす影響

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抄録

<p>【目的】</p><p>近年Brain-Machine Interface (BMI)を使用したリハビリテーション(BMIリハ)の臨床研究が進められており,我々は手指運動麻痺に対するBMIリハとして一人称での運動観察が可能となるDigital Mirror Box(DMB)を考案した.先行研究では一人称での運動観察時,脳卒中片麻痺患者のMEP振幅値は増大するがF波に変化は認められなかった(Patuzzo,2003)ことが報告されている.しかし近年,手指の運動機能回復時にF波のタイプが増えることも報告されている(Suzuki,2016).そのため,DMBを使用したBMIリハがF波に及ぼす影響を検討する.</p><p>【方法】</p><p>対象は脳卒中片麻痺患者7名とした.年齢は62.1±7.8歳で,発症から本研究までの期間は102.6±26.6日であった.課題は安静後にDMBを用い一人称視点の手指運動動画を観察しながら運動イメージを想起させた. 運動イメージを想起した際に,損傷側一次運動野のμ波帯域律動(8~13Hz)の減衰(event-related desynchronization;ERD)強度に応じて麻痺手に取り付けた外骨格ロボット(エルエーピー社)を作動させるsynchronous条件(S条件)とERDに依存せず,必ず外骨格ロボットを作動させるasynchronous条件(AS条件)で実施した. 1日に5施行×5セッション行い,対象者のうち3名はS条件を2週間行った後にAS条件を2週間行い,残り4名は逆の順で行った.F波の測定は麻痺側示指背側骨間筋より導出し,安静時と運動観察時に行った.安静時は椅子座位にて測定し, 運動観察時はDMBに手指屈伸運動の動画を提示し観察中に測定した.各条件の期間の前後でF波を測定し,前後の差を算出しWilcoxon符号付順位和検定を用いて分析した.また, F波の出現タイプ数の変化を求めるため,出現潜時とF/M値から階層的クラスタ分析を実施した.さらに樹形図を作成しクラスタ数を算出した.</p><p>【結果】</p><p>運動観察時のクラスタ数はS条件3.4±2.0,AS条件0.7±1.6で有意差を認めた(p<0.05).安静時のクラスタ数はS条件0.6±1.3,AS条件0.3±1.6,安静時F/M値はS条件0.1±1.0,AS条件0.1±1.1,運動観察時F/M値はS条件1.5±0.3,AS条件0.5±1.4であり有意差を認めなかった. </p><p>【考察】</p><p>運動観察時のF/M値に有意差は認められなかったが,クラスタ数がS条件にて有意な増加を認めたことから,S条件はAS条件に比較して運動観察中に出現するF波のタイプを増加させ,脊髄運動ニューロンへ多様性を与えることが示唆された.DMBを用いたBMIリハは,脳活動に同期した感覚フィードバックの入力により,運動機能回復時に認められる脊髄運動ニューロンの興奮状態へコンディショニングすることが考えられる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て実施した.また,ヘルシンキ宣言に基づき,対象者の保護に留意し,本研究の目的について説明し同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-97_2-E-97_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087937408
  • NII論文ID
    130007693215
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-97_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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