運動強度設定に難渋した陳旧性心筋梗塞の一例

DOI
  • 橋爪 佳代
    医療法人共和会小倉リハビリテーション病院 地域リハビリテーション部
  • 圓谷 隆治
    気仙沼市立病院 循環器科

抄録

<p>【目的】</p><p> わが国における虚血性心疾患は生活習慣の欧米化に伴い増加している。急性心筋梗塞(AMI)に対する経皮的冠動脈インターベーション(PCI)や冠動脈バイパス術(CABG)などの血行再建術は高齢者でも効率よく行われており、死亡率の低下に寄与している。しかし、高齢者においては、多枝病変や心不全合併などの重症例が多く、また糖尿病など他疾患の合併も多いため、治療が成功した症例でも長期臥床を余儀なくされる例がある。そのため、心肺運動負荷試験(CPX)等での運動強度の設定が十分に行われず退院することも多い。</p><p> 今回はAMI後監視型運動療法を経験せず在宅復帰され、訪問リハビリテーションが開始となった症例を担当した。運動療法開始にあたり、運動強度設定に難渋した経験をここに報告する。</p><p>【方法】</p><p> AMIにてCABG(3枝)術後、週1回40分の訪問リハビリテーション利用の70代女性、身長144cm、体重43kg、BMI 20.74の1名を対象(既往歴:高血圧症、糖尿病、高脂血症、脳梗塞、腰部脊柱管狭窄症)とした。方法はサイクルエルゴメーター(ウルトラスポーツ製/Fバイク)の実施時間、心拍数(以下、HR)と経皮的動脈血酸素飽和度(フィンガルリンク株式会社製/フィンガーチップパルスオキシメータC25)(以下、SpO2)、Borg Scale(胸部、下肢)の経過、日常生活動作の確認(METsからPeak VO2を予測)やHbA1c(聞き取り)を後方視的に効果判定した。</p><p>【結果】</p><p> サイクルエルゴメーター開始より約1ヶ月の平均Borg Scaleは胸部13、下肢16、平均実施時間は8.1分、終了理由は下肢疲労であった。その後の約2ヶ月間の平均Borg Scaleは胸部13、下肢13、平均実施時間は11.3分、終了理由は下肢疲労であった。SpO2は98%で変化が見られなかった。HRは平均84.8bpmで経過し、3ヶ月目に平均 91.5bpmへ増加した。METsはサイクルエルゴメーター開始当初(2.0METs≒7ml/min/㎏)、3ヶ月後(5.0METs≒17.5ml/min/㎏)であった。HbA1cは3ヶ月で7.0%≧から 6.2%へ改善した。</p><p>【結論】</p><p> サイクルエルゴメーター開始当初は、活動筋の酸素消費量増加に見合うだけの酸素摂取量が得られず、酸素不足による下肢疲労が出現し、運動耐用時間が短縮したものと思われる。自覚症状が運動中止または変更基準とされるBorg Scale14以上を示していたにも関わらず、運動を継続した理由は既往歴の影響も考慮したためである。METs換算で身体活動能力・生命予後の指標となるPeak VO₂が心事故を起こすことなく改善できた理由としては、5分間のウォーミングアップを徹底し、ATレベルの強度とされるBorg Scale13を10~15分行った結果と捉えている。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団倫理委員会の承認を得た。また、対象者には事前に研究の内容と目的を説明し、口頭と書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-72_2-G-72_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282763134540800
  • NII論文ID
    130007693509
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-72_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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