埋め込み式浴槽における跨ぎ動作が脊椎の屈伸角度に与える影響
書誌事項
- タイトル別名
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- -健常成人男性を対象とした座位・立位での違いについての横断研究-
抄録
<p>【はじめに、目的】</p><p> 脊椎固定術後患者は,体幹の過度な動きが禁忌となる.その為,ADLにおいては禁忌肢位を考慮する必要がある.中でも浴槽跨ぎを有する入浴動作は,最も自立困難な動作とされており,脊椎固定術後患者へ跨ぎ動作を適切に指導する事はリスクだけでなくQOLを左右するといえる.本研究の目的は,埋め込み式浴槽において,座位・立位での跨ぎ動作の違いが脊椎屈伸角度に与える特徴を明らかにし,動作指導の一助とする事である.</p><p>【方法】</p><p> 対象は,健常成人男性25名(平均±標準偏差)で,年齢(25.1±3.3歳),身長(171.1±4.8㎝).測定課題は,座位・立位の跨ぎ動作とした.測定機器は,ADLシミュレーター(オージー技研株式会社製)を使用し,浴槽高は浴槽上端を脛骨粗面の高さで設定した.開始肢位は,座位ではバスボード上の端坐位とし,立位では手すりを把持した状態とした.なお,開始肢位から浴槽内への右脚接地までをlead脚,左脚足底の離地から浴槽内に接地するまでをtrail脚とした.対象者には体幹の動きを伴わないよう指示した.測定角度は,3次元動作解析装置マイオモーション(酒井医療株式会社製)を使用し,動作別及び立位でのlead脚・trail脚のフェーズ別に胸腰椎最大屈伸角度を算出した.また,フェーズ別では股関節の各最大角度についても算出し,胸腰椎との関係について検討した.統計解析は,座位・立位及びread脚・trail脚での違いが胸腰椎屈伸角度に与える特徴を検討する為に対応のあるT検定及びWilcoxon検定を用いた.また股関節との関係をPearsonの積率相関係数を用い解析した.</p><p>【結果】</p><p> 腰椎屈伸角度(平均±標準偏差)は,立位(32.3±9.0°),座位(54.1±9.5°)と座位で有意に大きくなった(p<0.01).胸椎では有意な差は認めなかった.立位のフェーズ別における腰椎屈伸角度(平均±標準偏差)は,lead脚(25.3±8.1°),trail脚(30.6±10.5°)とtrail脚で有意に大きくなった(p<0.05).また,胸椎屈伸角度の中央値においても,lead脚10.2°・trail脚13.6°とtrail脚で有意に大きくなった(p<0.05).立位のtrail脚で,腰椎屈伸角度に関係する股関節の動きは,屈曲(r=.67 p<0.01)・内転(r=.48 p<0.05)・外転(r=.62 p<0.01)・外旋(r=.43 p<0.05)であり,胸椎屈伸角度については,内転(r=.70 p<0.01)・内旋(r=.53 p<0.01)・外旋(r=.43 p<0.05)であった.</p><p>【結論】</p><p> 座位での跨ぎ動作は,立位に比べ筋骨格系の影響で骨盤後傾を伴うため腰椎屈伸角度が大きくなると考える.立位での跨ぎ動作は,埋め込み式浴槽により高低差が伴う為,lead脚とtrail脚で胸腰椎・股関節に与える影響が異なったと考える.これは,高低差によるtrail脚の相対的な内転に加え,把持している手すり位置が動作中で正中から遠ざかり体幹・骨盤の回旋を伴った結果であると考える.本研究により,立位での跨ぎ動作を指導する際はtrail脚にも着目が必要であると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p> 本研究は,ヘルシンキ宣言に基づいた倫理的配慮を行い説明し同意を得た.</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-27_2-H2-27_2, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282763134195328
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- NII論文ID
- 130007693927
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可