肩甲骨モビライゼーションが上肢ニューロダイナミックテスト1に及ぼす即時的効果

DOI
  • 三根 幸彌
    東京工科大学医療保健学部理学療法学科 南オーストラリア大学 International Centre for Allied Health Evidence

書誌事項

タイトル別名
  • -クロスオーバーランダム化比較試験-

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>頸椎・上肢における末梢神経障害の頻度は高い(Iyer et al., 2016)。頸椎に対するLateral Glideは上肢ニューロダイナミックテスト1(以下ULNT1)を改善させるうえで有効であると報告されている(Coppiters et al., 2003)が、頸椎神経根障害を有する患者の場合には痛みを誘発しやすい可能性がある。本研究は,肩甲骨モビライゼーションが上肢ULNT1に及ぼす即時的効果を検討することを目的とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は東京工科大学に在籍する12名の健常成人学生(平均年齢21.1±0.3歳、うち女性2人)とした。研究デザインはクロスオーバーランダム化比較試験とした。肩甲骨モビライゼーションは側臥位で利き手側の肩甲骨に対してGradeⅢ++、0.25Hzで挙上と下制の方向にそれぞれ交互に40秒を3セット、10秒間の休憩を挟んで計2分20秒行った(Maitland, 2013)。対照介入はプラセボ介入とし、同一肢位で肩甲骨を中間位で2分20秒間把持した。評価尺度はULNT1(Butler, 2000)とし、検者内信頼性を高めるために肩関節外転・外旋の可動域をそれぞれ90°に設定し、最終域での肘関節伸展角度をゴニオメーターで測定した。最終域での痛みを11段階のスケールで問診した。測定は同一の2人の検者が行った。介入の順番は無作為に決定し、24時間以上の間隔を設けて2回の実験を行った。測定は介入の直前・直後に行った。信頼性を検討するために、2回のベースラインの値を用いてULNT1と痛みの級内相関係数をそれぞれ求めた。ULNT1と痛みの群内・群間比較については、t検定、Wilcoxonの順位和検定、Mann-Whitney検定を用いて検討した。有意水準を5%未満とした。臨床的有意性については,群間における効果量(Hedges’ g)と95%信頼区間(CI)を用いて検討した。統計処理にはSPSS(IBM, USA)を用いた。</p><p>【結果】</p><p>ULNT1と痛みの級内相関係数はそれぞれ0.87と0.93であり、高い検者内信頼性が確認された。肩甲骨モビライゼーション群においてのみ、介入前後で有意なUNLT1の改善がみられた(p<0.01)。両群において、介入前後で痛みの軽減がみられた(p<0.05)。群間比較では、プラセボ群と比較して肩甲骨モビライゼーション群は有意にULNT1を改善したが(p<0.05)、痛みの変化には有意差はみられなかった。効果量はULNT1について1.02(95%CI -1.34 to 3.40)、痛みについて0.15(95%CI -0.26 to 0.57)であった。</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>肩甲骨モビライゼーションが神経系の機械的過敏性を即時的に低下させ、ULNT1を改善する可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は東京工科大学倫理委員会より承認を受け(第E17HS-024号),対象に対して研究の目的と個人情報の保護について十分説明を行い書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-29_1-H2-29_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088745600
  • NII論文ID
    130007693936
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-29_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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