人工膝関節置換術後急性期での階段降段能力を決定する因子の検討

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  • ~1足1段での降段能力獲得にむけて〜

抄録

<p>【はじめに】</p><p>人工膝関節置換術(以下TKA)術後患者において階段降段はADLの中で困難と感じる動作の上位に含まれると報告されている.石井らはシングルスクワットは階段降段能力を反映する評価であるとしているが,術後急性期での階段降段可否の評価指標としては疼痛や負荷量の観点から難易度が高いと考えられる.先行研究では階段昇降能力獲得のための因子の検討は散見されるが,1足1段での降段可否に焦点を当てた報告は少ない.今回はTKA術後患者の退院後ADLを考慮し,片手摺りを使用しながら1足1段での階段降段のために必要な因子を検討することを本研究の目的とした.</p><p>【方法】</p><p>対象は当院にてTKAを施行した患者で,再置換術例,他関節疾患合併例,受動術施行例を除いた39例39膝(男性7例,女性32例,平均年齡76.0±7.2歳,身長151.4±6.8cm,体重56.7±11.1kg,在院日数33.7±10.4日)とした.うち5例は両側TKAを施行し,疼痛や可動域制限の大きい下肢を対象の膝とした.評価項目は退院時の階段降段能力,在院日数,患側膝関節他動屈曲可動域(以下他動屈曲ROM),患側膝関節伸展筋力,下肢荷重率,両脚スクワットでの最大膝関節屈曲角度(以下両脚スクワット角度)の6項目について調査した.階段降段能力は当院の訓練用階段(蹴上18cm)にて評価し,片手摺りを使用し疼痛無く1足1段で降段可能群と不可群に分類した.筋力はアニマ社のμTasF-1を用いて膝関節60°屈曲位で2回測定した平均値を体重で除した値(kgf/kg)を算出した.下肢荷重率はアニマ社のGP-6000で計測した.両脚スクワット角度はゴニオメーターで2回測定し平均値を採用した.統計解析は階段降段能力を従属変数,他の項目を独立変数とし,ステップワイズ法による多重ロジスティック回帰分析を行った.抽出された変数に対してROC曲線にて曲線下面積(以下AUC)を算出し,Cutoffおよび感度・特異度を算出した.統計処理にはR2.8.1を使用し,有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>階段降段可能群は17例,不可群は22例であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,階段降段に関与する因子として在院日数:OR0.93,95%CI0.85-1.01,他動屈曲ROM:OR1.19,95%CI0.96-1.47,荷重率:OR1.15,95%CI0.95-1.40,両脚スクワット角度:OR1.12,95%CI1.01-1.25の4項目が抽出された.(モデルX二乗検定:p<0.01)ROC曲線を用いて算出した結果は,在院日数:Cutoff30日,AUC=0.63,感度53%,特異度32%,他動屈曲ROM:Cutoff130°,AUC=0.79,感度100%,特異度54%,荷重率:Cutoff49.65%,AUC=0.56,感度59%,特異度50%,両脚スクワット角度:Cutoff88.5°,AUC=0.76,感度70%,特異度72%であった.</p><p>【考察】</p><p>抽出された変数の95%CIから,特に両脚スクワット角度は階段降段能力への影響が大きく,荷重下での下肢の支持性が重要であることが示唆された.患者に不利益無く後療法を行う一助としてCutoff88.5°という定量的な目標値が得られたが,術後疼痛や他関節の影響,筋組織の修復過程などを考慮し適切な時期を見極めていく事も今後の課題とするべきである.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は永生会倫理委員会の承認を得た。(承認番号:17-05)対象者には事前に研究の主旨について充分に説明し,書面にて同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-5_2-H2-5_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238110911744
  • NII論文ID
    130007693992
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-5_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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