人工膝関節置換術後の歩行動作の動態解析

DOI
  • 伊能 良紀
    栗田整形外科
  • 冨田 哲也
    大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学寄附講座
  • 山崎 隆治
    埼玉工業大学工学部情報システム学科
  • 近田 彰治
    大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座(運動制御学)
  • 藤戸 稔高
    大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学寄附講座
  • 石橋 輝哉
    大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学寄附講座
  • 吉川 秀樹
    大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座整形外科学
  • 菅本 一臣
    大阪大学大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学寄附講座

Bibliographic Information

Other Title
  • 〜生体内三次元動態と床反力計の同時計測の有用性〜

Abstract

<p>【目的】歩行は日常的に繰り返される動作であり,人工膝関節置換術(TKA)後の患者満足度に多大な影響を及ぼす.TKA後の歩行における人工膝関節の3次元動態と下肢に作用する床反力の双方を正確に把握することは,TKA後の理学療法にとって有用な知見をもたらすことが期待される.そこで今回,TKA症例を対象とし,歩行時における透視X線撮像と床反力の同時計測を実施し,その有用性を検討した.</p><p>【方法】対象は変形性膝関節症に対してTKA(Smith & Nephew社JOURNEY II CR)を行った2例2膝(症例1:男性1膝,84歳,症例2:女性1膝,71歳,両症例とも術後1年以上)とした.自由速度の歩行を床反力計上で行い,側面方向からX線透視装置にて連続撮影した.床反力計によって得られた鉛直方向の床反力(Fz)のデータから,術側の立脚期を抽出し,立脚期を100%とする時間の正規化を行った.また,歩行時のFzを立位安静時のFzで除することで(N/BW),体重に対する比として正規化した.通常,歩行動作におけるFzは二峰性を示すが,そのうち最初のピークが観察される瞬間をFz_peakとし,解析した.[KS1][yi2]3次元動態解析は,得られた透視X線画像に対して人工膝関節の3D-CADモデルのマッチングを行う2D/3D registration techniqueを用いて,歩行動作時における人工膝関節の3次元的な位置・姿勢を算出した.</p><p>【結果】Fz_peakは歩行周期の39.03%(症例1)と32.67%(症例2)で観察され,その大きさはそれぞれ1.06N/BWと1.05N/BWであった.症例1では,Fz_peakが観察されるより前の歩行周期(18.05%〜23.31%)においてFzが増加しない期間が観察され,健常なボランティアを対象とした研究では報告されていないような特徴を示した.3次元動態解析の結果,立脚期直前の遊脚期における人工膝関節の屈曲角度に特徴が観察され,それぞれ54.7度(症例1)と28.7度(症例2)であった.また,症例1では踵接地時において脛骨コンポーネントに対して大腿骨コンポーネントがより後方に位置していた(症例1:5.7mm,症例2:3.1mm).</p><p>【結論】人工膝関節置換術(TKA)後の歩行の特徴として,踵接地期では,Fzの減少や歩行周期における踵接地のタイミングの遅延が生じると言われている.TKA後の理学療法を行うにあたり,TKA症例における詳細な歩行動態の特徴を解明することは重要であると考えられる.2D/3D registration techniqueは,姿勢推定精度が0.4mm,0.5度未満であることから,生体内の3次元動態を正確かつ定量的に把握することが可能である.また,床反力計は,歩行に代表されるような荷重動作における接地のタイミングや各局面における荷重方向を詳細に把握することが可能である.この透視X線画像と2D/3D registration techniqueによる関節内動態の計測と床反力計による計測を組み合わせることで,最も大きな床反力が作用する局面における人工膝関節の3次元的な位置・姿勢を特定することができ,動態と歩行時の荷重パターンを把握することが可能となる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護には十分留意し,説明と同意を得た.</p>

Journal

Related Projects

See more

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390845713087630208
  • NII Article ID
    130007694032
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-74_2
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top