MRIを用いたL4/5腰椎変性すべり症患者のすべりの程度と椎間関節水腫に関する研究

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>腰椎変性すべり症は,加齢による退行変性の代表的な疾患である。また、椎間関節水腫(facet effusion:FE)は腰椎変性すべりの生じている椎間関節裂隙部にT2強調画像で高輝度の変化を示す。本研究の目的はすべり症患者のFEの存在率やすべり椎間以外のFEの有無を調査し、さらに、FEと椎体周囲筋の断面積測定を行う。そして、腰部疾患を有さない高齢者との比較やすべりの程度での比較、すべりの程度、FE、筋断面積の関連性の検討を行うことである。</p><p>【方法】</p><p>腰椎変性すべり症と診断されたL4/5変性すべり症患者36名(すべり症群:男性7名、女性29名、66.3±8.8歳)を対象とした。また、腰椎疾患を有さない高齢者10名(男性4名、女性6名、63.8±11.3歳)を対照群とした。側方X線画像、MRI画像正中矢状断面像を用いて、Meyerding分類によるL4/5すべりの程度とTaillard法によるL4/5椎体すべり率を計測した。さらに、L4/5椎体の不安定性の評価としてX線(立位)とMRI(臥位)におけるすべり率の差を算出し、3%を基準に椎体不安定性を評価した。L3/4、L4/5、L5/S1におけるFEの有無や面積を測定した。さらに、L4下部レベルの大腰筋と脊柱起立筋の筋断面積を測定した。また、脂肪を含めた非収縮性組織(筋内の高輝度に表出されている部分)を測定し、筋断面積から非収縮性組織の差として除脂肪面積を算出した。さらに、脂肪面積と除脂肪面積から脂肪率を算出した。FEや筋断面積の計測にはMRIのT2強調画像を用いた。臨床症状としてL4/5すべり症患者の25名の痛みの程度(VAS)をカルテより収集した。統計処理は各群の正規性検定を行い、その後の統計学的検定を選択し検討した。有意水準は5%とし、統計処理ソフトは、SPSS(Version20, IBM, USA)を使用した。</p><p>【結果】</p><p>FEはすべり症群の100%、対照群の90%に観察された。対照群のFE面積はすべり症群と比較してL4/5椎体間で有意に小さかった(p<0.01)。Meyerding分類1°群や椎体不安定性3%以上群のFE面積は対照群と比較して有意に大きかった。すべり症群のすべり率や痛みの程度が大腰筋面積と有意な負の相関関係を認めた(r=-0.40、r=-0.41、p<0.05)。また、すべり率と脊柱起立筋の脂肪率に有意な正の相関を認めた(r=0.42、p<0.01)</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>L4/5すべり症群だけでなく対照群においてもFEが観察され、FEは椎間不安定性だけでなく椎体や椎間関節の加齢変化により生じる可能性が示唆された。L4/5すべり症患者では近接する椎体関節にもFEが観察され、椎間不安定性はFEの大きさに影響することが示唆された。椎体のすべり率や疼痛は大腰筋と関係があり、姿勢変化との関係が示唆された。すべり率と脊柱起立筋の脂肪率に正の相関があり、脊柱起立筋内の質的変化とすべりの程度に関係があることが示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は霧島整形外科倫理審査委員会の承認(承認番号:00006)を得て行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-7_2-H2-7_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845713088757632
  • NII論文ID
    130007694051
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-7_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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