荷重日内頻度の相違がラットヒラメ筋の廃用性萎縮回復過程に与える影響

DOI
  • 森田 結衣
    金沢大学大学院医薬保健学総合研究域
  • 宮地 諒
    石川県済生会金沢病院 リハビリテーション部 金沢大学医薬保健研究域保健学系
  • 山崎 俊明
    金沢大学医薬保健研究域保健学系

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>入院患者の早期回復には,廃用性筋萎縮の進行抑制や,可能な限り早期に萎縮筋の回復を促すことが重要である.臨床では早期からの荷重や運動療法が日常的に行われており,荷重等の機械刺激が廃用萎縮筋の回復に対し有効であることは諸家により報告されている.入院患者に理学療法を行う際,2単位連続で介入する場合と,午前,午後等1単位ずつ分けて介入する場合があるが、廃用萎縮筋に対する荷重日内頻度による影響については明らかではない.そこで,本研究では,廃用萎縮筋の回復に対する荷重の効果に関し,荷重日内頻度による影響について検討することを目的とした.さらに,筋萎縮の程度が筋の長軸部位により異なる報告があることから,長軸部位の観点から病理学的に分析した.</p><p>【方法】</p><p>8週齢のWistar系雄ラット39匹を無作為に,通常飼育する群(C群),後肢懸垂処置により廃用性筋萎縮を惹起する群(HS群),廃用性筋萎縮惹起後に荷重処置を実施する群(W群)に振り分けた.W群は7日間の後肢懸垂処置後,7日間毎日60分間の荷重を1回実施するWO群と30分間の荷重を4時間間隔で2回実施するWT群の2群とした.さらに,各群の実験期間を1日(C1群),7日(C7群,HS7群) ,14日(C14,HS14群,WO群,WT群)とした.実験期間終了後,ヒラメ筋を摘出し,凍結切片を作成した.HE染色後,右ヒラメ筋中央部の筋線維横断面積を測定した.さらに,左ヒラメ筋の近位部,中央部,遠位部における壊死線維発生割合,中心核線維発生割合を分析した.統計学的処理は,各群間,長軸部位間の比較に,分散分析を適用した(p<0.05).</p><p>【結果】</p><p>中央部の筋線維横断面積は,WT群がWO群よりも有意に高値を示した.壊死線維発生割合は,WO群とWT群間で比較すると,WT群の方が高い傾向にあったが,有意差は認めなかった.筋の部位別に比較すると,WO群,WT群ともに,遠位部で高い傾向にあった.中心核線維発生割合は,WT群がWO群と比較し有意に高値を示し,筋の部位別に比較すると,WO群では,遠位部が近位部と比較し高い傾向にあり,WT群では近位部,遠位部が中央部と比較し高い傾向にあった.</p><p>【考察】</p><p>WT群はWO群と比較し,壊死線維発生割合,中心核線維発生割合ともに高値を示す傾向にあることから,WT群では,筋線維の壊死,再生が活発に生じたと考えられる.また,筋線維横断面積においても,WT群がより高値を示し,筋肥大が生じたことが考えられる.以上のことから,WT群がWO群と比較し,有効な介入であったことが示唆された.また,壊死線維発生割合,中心核線維発生割合ともに,筋の長軸部位により荷重刺激の効果が異なり,特に遠位部で荷重の影響を受けやすいことが示唆された.</p><p>【結論】</p><p>30分間の荷重を1日2回行うことは,60分間の荷重を1日1回行う場合と比較し,廃用萎縮筋の回復過程に対する介入として効果的であり,長軸部位によりその効果が異なる可能性が示唆された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,金沢大学動物実験委員会の承認(AP-163790)を得て実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-113_1-I-113_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111311744
  • NII論文ID
    130007694103
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-113_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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