調整式歩行訓練車を用いた6分間歩行試験を試みた脊髄性筋委縮症Ⅱ型の一症例

DOI
  • 齊藤 翠
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 長谷川 三希子
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 内尾 優
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 鈴木 隼人
    東京女子医科大学病院 リハビリテーション部
  • 和田 太
    東京女子医科大学 リハビリテーション科
  • 荒川 玲子
    東京女子医科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科
  • 齋藤 加代子
    東京女子医科大学病院遺伝子医療センターゲノム診療科
  • 猪飼 哲夫
    東京女子医科大学 リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】</p><p>脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)Ⅱ型の治療効果判定に最も使用されている運動機能評価はHammersmith Functional Motor Scale Expanded (HFMSE)である。しかし機能評価が必ずしもSMAの特徴である筋力や耐久性の低下、疲労による運動制限を十分に評価できるとは限らない。6分間歩行試験(6-Minute Walk Test:6MWT)は、高価な機材を必要とせず簡便に評価可能なことから、多くの疾患に適応されている。</p><p>今回アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤の髄注治療(ASO治療)を行ったSMAⅡ型一症例において治療効果判定にHFMSE及び、調整式歩行訓練車を用いた6MWTを実施したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>9歳女児。SMAⅡ型。1歳7ヶ月で確定診断された。発達歴は定頚4ヶ月、寝返り5ヶ月、独座9ヶ月であった。現在、知的レベルは良好で、運動機能は立位、歩行は獲得できていない。ASO治療を3回行った。</p><p>ASO治療前後での運動機能評価としてHFMSEを治療前、治療後1、4、7ヶ月の計4回行った。6MWTは治療前と治療後1、4、5、6、7ヶ月に行い、1分毎の歩行距離と総歩行距離、6MWT終了直後に主観的運動強度をOMNI-RES010 scaleにて評価した。6MWTの歩行経路は直線25mの歩行路から、治療後5ヶ月より1周50mのトラックへと変更した。歩行車はRifton社のダイナミックペーサーを用いて、その都度姿勢や歩きやすさを本人と調整した。</p><p>【結果】</p><p>HFMSEは治療前24点、治療後1ヶ月24点、4ヶ月26点、7ヶ月27点であった。6MWTの総歩行距離(1分毎の歩行距離)は治療前19m(7m/2m/3m/4m/2m/1m)、治療後1ヶ月50m(18m/7m/1m/16m/8m/0m)、4ヶ月50m(12m/12m/1m/13m/10m/2m)、5ヶ月73m(13m/10m/10m/14m/12m/14m)、6ヶ月78m(22m/8m/15m/10m/10m/13m)、7ヶ月88m(18m/16m/14m/12m/13m/15m)であった。OMNI-RES010 scaleは全評価で「2:少し疲れた」であった。</p><p>【考察】</p><p>先行研究によれば歩行不能なSMAの児でHFMSEのスコアは1年間で0.96点低下するとされている。6MWTはHFMSEのスコアと高い相関が示されている。本症例はHFMSEにおいて3点上昇し、6MWTの総歩行距離においても増加した。このことはASO治療の効果と考えられる。SMAⅡ型に対し調整式歩行訓練車を用いた6MWTの評価は、治療効果判定に用いることができる可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本症例およびその家族に対し、研究趣旨、匿名性保護、および自由意思による協力の拒否や同意の撤回による不利益のないことを、文書と口頭で説明し同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), J-80_2-J-80_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238112079744
  • NII論文ID
    130007694318
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.j-80_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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