長崎県島嶼の水環境特性と形成要因(4)

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  • Water Environment Characteristics and Forming Factors of Islands in Nagasaki Prefecture(4)

抄録

<p>Ⅰ はじめに</p><p>長崎県の島嶼に関する水文学的特徴を解明するため、2014年より五島列島、対馬、壱岐、平戸と研究を進めており、数年間の調査により明らかになった季節変化や海塩の影響をはじめとした各島の特徴を発表してきた。今回は、島嶼における水質形成の共通性および差異を、調査結果の統計解析を行った結果をふまえて考察する。</p><p>Ⅱ 対象地域</p><p> 壱岐は、最高標高213mでありながら起伏に富み、島の各地に数多くの溜池が存在している。韓国から約50kmのところに位置する対馬は、約89%を山地が占め、島全体の標高が比較的高く急峻な地形である。平戸諸島も山がちな地形をしているが田畑は対馬より多く、各地で棚田が見られる。五島列島は、大小140の島々からなり、主要な島嶼においても地質や土地利用が多様である。いずれの島嶼も汚水処理人口普及率は20-40%程度と低く、人口の減少が続いている。</p><p>Ⅲ 研究方法</p><p> 既存研究の整理と検討を行った上で、現地調査は五島列島で2014年から4回、壱岐で2015年から9回、対馬は2016年から10回、平戸は2017年に8回行った。現地では、水温、気温、電気伝導度(EC)、比色pHおよびRpH、COD(2017年・2018年・2019年の5月のみ)を計測し、採水して全有機炭素の測定と主要溶存成分の分析を行なった。雨水は壱岐・平戸各3か所、対馬4か所、五島列島・島原各1か所で毎月採取し、分析を行っている。</p><p>Ⅳ 結果・考察</p><p> 壱岐とそれ以外の3島では、河床勾配が異なり、壱岐では、対馬や平戸の河川と比べて上流部から溶存成分濃度が高いことが特徴である。対馬では、下島南部の矢立山周辺を流域に持つ河川で海塩の影響が特に強い。急峻な地形であることから風送塩や海水を多く含んだ降水がとどまったものと考えられる。平戸の生月島や的山大島でも同様の傾向が見られるが、こちらは面積が小さいことも大きい。</p><p> 観測結果および主要溶存成分について統計解析を行い、島嶼ごとに主成分を算出すると、いずれもECや主要溶存成分量に関する主成分が第1主成分となったと言え、主要溶存成分の濃度が水質の差を示す大きな要因であると考えられる。第2、第3主成分にはpH・RpHと水温との関係を示唆する主成分や、相対的に水質汚染を示す主成分となっていると考えられる。クラスター分析の結果、水質がある程度地域によって分けられ、主成分得点との比較から、地域による水質の特徴も示唆され、対馬では地形や地質、壱岐は多くのため池や流量が少ない河川が同じクラスターとなり、滞留時間が影響していると考えられ、対馬は地形や地質が水質クラスターを分類していると言える(図1)。</p><p>分析に使用する変数については、水質データの吟味、起伏量や土地利用率、人口といった流域環境要素を入れるなど、改善の余地がある。</p><p>Ⅴ おわりに</p><p> 以上から、島の地形や地質の違いによって、水質が区分されていることが示唆された。今後は、小流域における解析と考察も踏まえて、水環境の空間的な差異と要因について解明していく。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845702282473088
  • NII論文ID
    130007710961
  • DOI
    10.14866/ajg.2019a.0_108
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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