集水域面積と縦断勾配を用いた表層地盤特性の推定

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  • Estimation of surface ground characteristics using catchment area and gradient

抄録

<p>はじめに</p><p></p><p> 沖積低地における面的な地盤情報の推定には,定性的な地形分類を用いた概略的な手法が使われることが多い(松岡ほか,2011;小荒井ほか,2018など).しかし,個々の地形種の定義は,地形学の進展や調査者の地形観,調査の目的,地形分類図の図幅などの違いによって異なりうるため,災害脆弱性との対応関係を評価する際にしばしば障害となってきた(赤桐・籾倉,1985;若松ほか,2004).</p><p> これらの問題を軽減するため,地形分類に縦断勾配の基準を加え,災害脆弱性の評価を簡易にする試みがなされてきた(赤桐・籾倉,1985;松岡ほか,2005;中埜ほか,2015など).これは,縦断勾配の違いが堆積物の粒径の大小に影響することを考慮している.一方で,羽田野(1982)は集水域面積と縦断勾配の関係から,地形種の分布域が異なることを示しており,集水域の空間的スケールを含めて考慮する重要性を示唆している.そこで本研究では,沖積低地(扇状地,蛇行原,三角州,谷底低地の総称)の集水域面積と縦断勾配の関係から,表層地盤のN値にどのような違いがあるか調査した.</p><p></p><p>調査手法</p><p></p><p> 地層構成とN値は,一般公開のボーリングデータ(国土交通省等『KuniJiban』,東京都建設局『東京の地盤(GIS版)』,岡山県建設技術センター『岡山県地盤情報』,高知地盤情報利用連絡会『こうち地盤情報公開サイト』,地盤工学会九州支部『九州地盤情報共有データベース2012』)から,本州・四国・九州の沖積低地に位置する1575本分を抽出した.沖積低地は地形判読により判別した. </p><p> 地層構成は,地表から深さ10mまでの「礫質層」,「砂質層」,「泥質層」の層厚の割合を算出した.ただし,盛土,埋土,表土の部分は除外した.また,深さ10mまでに基盤岩が含まれるものや,火山性の地層を含むものは対象外とした.</p><p> N値は,換算N値(上限値300)とし,地表から深さ10mまでの各層内で計測されたN値を抽出し,各層のN値の平均値を算出した.次に,このN値の平均値について,対応する各層の層厚(m)で乗じたものを足し合わせ,最後に10(m)で除したものとした.</p><p> 集水域面積(A)は国土数値情報の『流域界データ』を基に,QGIS上でボーリング地点ごとの集水界となるように編集し,QGISの計算機能を用いて算出した.</p><p> 縦断勾配(S)は沖積低地の一般面(自然堤防等の微地形を除いた地形面)の平均縦断勾配とした. Sの計測は国土地理院の基盤地図情報DEMを使用し,QGIS上で2 m 間隔の等高線データを作成して,ボーリング地点を挟む等高線間の距離を計測することで算出した.</p><p></p><p>分析結果</p><p></p><p> AとSの回帰式から,Sが同一であっても,Aが大きいほどN値が大きく,Aが小さいほどN値が小さいことがわかった.</p><p> 河川の土砂輸送能力に関係するspecific stream power index(ω)を,Flores et al.(2006)の次式 ω=SA0.4  から算出し,ωとN値の関係を図1に示す.ωとN値(N)には正の相関(r= 0.57)があり,以下の回帰式が得られた.</p><p></p><p> N=340ω0.76 </p><p></p><p> ωが同一のとき,N値の四分位範囲はおよそ3倍の分布幅を示した.このバラツキの要因の1つとして,微地形の影響が考えられる.そこで,国土地理院の『治水地形分類図(更新版)』における「微高地(自然堤防等)」,「旧河道」に該当する352本について,ωとN値の関係を分析した.その結果,ωが大きいほど,N値は「旧河道」>「微高地(自然堤防等)」の傾向を示した.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390845702282536064
  • NII論文ID
    130007711058
  • DOI
    10.14866/ajg.2019a.0_59
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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