胎盤に発現するアミノ酸トランスポーター遺伝子<i>Slc38a4</i>のノックアウトマウス胚は胎盤低形成および胎児発育不全を示す

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Paternal knockout of <i>Slc38a4</i>/SNAT4 causes placental hypoplasia associated with intrauterine growth restriction in mice

抄録

<p>【目的】哺乳類の胎盤は母体—胎児血流間の栄養・ガス交換をはじめ,胚発生を支える重要な機能を持つ。胎盤を介して胎児に供給される栄養源には糖・脂質・アミノ酸などが含まれるが,その供給に関わる分子メカニズムは詳細に解析されていない。本研究では,細胞内への中性アミノ酸の取り込みを担う「システムAアミノ酸トランスポーター(SNAT)」に着目し,SNATをコードする3種類の遺伝子Slc38a1Slc38a2Slc38a4について,胎盤および胚の発生における機能を解析した。【方法・結果】まず,SNATファミリー遺伝子の様々なマウス組織における発現をRT-qPCRによって解析した結果,3つの遺伝子は全て,胎盤で高発現していることが分かった。そこで,Triple-target CRISPR法によって3種類のSNAT遺伝子についてノックアウトマウスを作製した結果,Slc38a4をノックアウトした時のみ胎盤の重量がコントロールと比べて30%ほど減少した。さらに,Slc38a4ノックアウトにより胎児重量も25%ほど減少した。Slc38a4は父方アレルから発現するインプリント遺伝子であるため,父方アレルを欠損したヘテロ胚も,ホモノックアウト胚と同様の表現型を示した。免疫染色によってSNAT4の局在を見ると,胎盤形成初期の絨毛膜領域で強く発現しており,ノックアウトマウスではこの領域の細胞分裂頻度が低下していた。また,胎盤形成中期以降は母体—胎児間の栄養交換を行うラビリンス層で発現していたため,胎児血漿のメタボローム解析を行ったところ,ノックアウトマウス胚では多くのアミノ酸の血中濃度が顕著に低下していた。【総括】以上の結果は,Slc38a4遺伝子がマウスの胎盤形成および胚発生において重要な機能を持つことを示している。SNAT4はヒトを含めた他の哺乳動物種の胎盤でも発現しているため,本研究で作製したSlc38a4ノックアウトマウスは胎盤形成異常およびその結果起こる子宮内発育遅延(IUGR)の良いモデルとなる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282752337590656
  • NII論文ID
    130007719356
  • DOI
    10.14882/jrds.112.0_p-85
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ