文化に即した災害時公衆衛生看護活動の概念整理

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  • Conceptual framework for culturally sensitive public health nursing under disasters
  • ブンカ ニ ソクシタ サイガイジ コウシュウ エイセイ カンゴ カツドウ ノ ガイネン セイリ

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抄録

<p>日本および世界で多発する自然災害に対し,世界基準の対策が整備されつつある.これらの世界基準を各地の実情に即して,より効果的に適応するために,文化に即して災害時公衆衛生看護活動をすることが必要となる.これらは未だ暗黙知といえ,形式知として世界の看護職と共有するべく,筆者らは研究を進めている.</p><p>本稿では,文化に即した災害時公衆衛生看護活動の概念枠組みを提示することを目的として,災害・文化・看護に関する汎用されている諸説・定義を整理した.</p><p>まず,本稿では災害を次のように整理し定義した.「自然現象や人の行為により,人と取り巻く環境に損害を受け,コミュニティの機能が維持できなくなり,外からの援助なしには人々の基本的ニードを満たすための行動様式の維持が困難になる状態」.</p><p>次に,文化を次のように定義した.「一定の生活圏域の人々が獲得・蓄積・共有・伝承してきた,災害を含む世界観・価値観・信念・規範に基づく思考・態度・行動様式.これらは人々の考え・意思決定・行動を導き,パーソナリティや存在意義を形成する」</p><p>災害時公衆衛生看護活動は次のように定義した.「災害発生前から事後までの全過程を通じて,人々とコミュニティが,病気や障がいの予防・健康維持と回復・平穏な死に向けて,平常時との落差を縮小して生活行動と政策を含めた環境を整えられるよう,人々とコミュニティと協働し,公正で安全な社会の維持・再構築を目指す活動」.</p><p>補足として,文化に即した災害時保健活動の成果,及び活動時の留意点を述べる.成果として,看護のアウトカムとしての安寧をもたらす一助となり,アイデンティティクライシスの予防にもなり得,さらに人々の規範や知恵を活かした効果的な活動となりうる.留意点は,保健師自身の文化を自覚し,文化的に安全(cultural safety)な活動を推進することが求められる.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 68 (4), 343-351, 2019-10-01

    国立保健医療科学院

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