種分化の遺伝学を目指して: モデル生物キイロショウジョウバエの利点と難点

DOI 日本農学文献記事索引 Web Site オープンアクセス
  • 髙橋 文
    首都大学東京・理学研究科・生命科学専攻 首都大学東京・生命情報研究センター
  • 田中 健太郎
    首都大学東京・理学研究科・生命科学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Genetics of speciation: Advantages and limitations of using <i>Drosophila melanogaster</i> as a model organism
  • タネ ブンカ ノ イデンガク オ メザシテ : モデル セイブツ キイロショウジョウバエ ノ リテン ト ナンテン

この論文をさがす

抄録

生殖的隔離機構が生じる遺伝的メカニズムについては、Bateson-Dobzhansky-Mullerモデルで示されたように遺伝的要素間の不適合に起因することが古くから概念化されている。モデル生物であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)やその近縁種を用いた研究では、交尾後に生じる不適合性に関与する遺伝子が複数同定されている。また、外部生殖器形態の種間差のような量的形質についても原因となる遺伝領域に迫るツールを駆使することができる。このような不適合性の生起には、自然選択が関与している場合としていない場合があるが、交尾後の生殖的隔離に寄与する遺伝子が同定されたケースの多くで、アミノ酸の置換速度が速いなど、正の自然選択が関与した痕跡が見られる。特にショウジョウバエでは速い進化の原因として、ゲノム内コンフリクトから生じる強い正の自然選択の関与が多く報告されているが、環境適応による自然選択が不適合性の生起に関与するケースがもう少し見つかってもよいのではないか、またそれを明らかにするためにモデル生物を用いる利点や難点は何か、今後の展望について考察する。

収録刊行物

  • 日本生態学会誌

    日本生態学会誌 69 (3), 183-190, 2019

    一般社団法人 日本生態学会

関連プロジェクト

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ