研究現場から

DOI
  • 田村 暁大
    国際医療福祉大学 成田保健医療学部 理学療法学科

Abstract

<p> 医学系研究について、諸外国から発表される総論文数が年々著しく増加傾向にあるのに対して、日本では伸び悩んでいる現状である。さらに、総人口当たりの論文数をみると、先進諸国から大きく引き離されており、これはリハビリテーション研究でも同様な傾向である。このような背景には、日本の研究者(博士号取得者含む)数の減少や研究活動を阻害する環境的な要因があると考えられている。更には、国際学会などに参加して最新の知見を得ることや研究活動に触れる機会が少ないことも、研究活動を妨げている要因かもしれない。</p><p> 医学系研究は、大きく「基礎研究」と「臨床研究」の2つのカテゴリーに分類される。運動器系理学療法における「基礎研究」の多くは、ある特定の疾患や動作、条件などを想定し、健常者を対象として行う研究である。「臨床研究」とは、厚生労働省の定義によると、疾病の予防・診断・治療方法の改善、疾病の原因および病態の理解・患者の生活の質の向上を目的として人を対象として実施されるものをいう。研究活動に従事するにあたり、医学的価値のある「基礎研究」を十分に積み重ねながら、質の高い「臨床研究」へ応用・発展させることがEBMとEBPTを実践するために必要不可欠であることの認識が必要である。</p><p> 理学療法士として、臨床や教育現場での活動に加えて研究活動にも従事することは、時間的にも環境的にも難しいケースが多いと感じる。研究活動を進めていくにあたり、基礎研究または臨床研究の行える環境を作ること、またはそのような環境に身を置くことが大切である。さらに、理学療法士一人ひとりの研究活動の実践により、多くの患者さんの悩みを解決する手段が増えることを認識して、研究活動を行う意義を明確化することが重要である。また、「運動器」とは、身体の構成要素としてそれらの機能的連合によって運動と身体活動を担うものと定義されていることからも、運動器系理学療法におけるEBM・EBPTは、運動器疾患だけではなく他領域の疾患や症例への応用も期待される。そのため、運動器系理学療法における研究活動として、質の高いEBM・EBPTを実践するための土台を構築することは、日本の理学療法がグローバルスタンダードに近づくために必要な要素であり、理学療法士の価値を高めるために重要な意味を持っていると考えている。</p><p> 以上のことから、今回、運動器理学療法における基礎的な研究論を紹介し、研究現場での現状や研究を行う意義などをお伝えしたいと考える。そして、研究活動について少しでも理解してもらえることとこれから研究活動を行っていきたいと考えている理学療法士が自らの研究疑問(リサーチクエスチョン)を解決するための助けになることを期待する。</p>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390002184860378368
  • NII Article ID
    130007779436
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_0018
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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