脳とからだの健康対策~認知症・介護予防の理論と実践~

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  • 牧迫 飛雄馬
    鹿児島大学 医学部保健学科理学療法学専攻 基礎理学療法学講座

抄録

<p> 「健康は第一の富である」(詩人・思想家、ラルフ・ワルド・エマーソン)と言われことがあるように、何事を行うにも健康であることが基本であり、我々にとって健康とは何事にも替えがたい優先順位の極めて高い状態と言えるかもしれません。</p><p> 2016年(平成28年)国民生活基礎調査によると、介護・支援が必要となった主な原因で最も多いのは認知症(18.0%)となっています。2000年に介護保険が始まって以来、介護の原因として最も多かった脳血管疾患(脳卒中)を認知症が上回る状況です。また、要支援者に限ってみてみると、高齢による衰 弱(16.6%:第2位)、骨折・転倒(15.2%:第3位)といった疾病とは分類しがたい原因が上位を占めています。そのため、記憶や注意力といった認知機能、筋力や歩行能力といった身体機能を良好な状態に維持することは、介護予防の観点から急務の課題となっています。</p><p> 『認知症』は予防できるのでしょうか・・・。現在のところ、認知症の予防または認知症の発症を遅らせることができる確な方法は明らかとなっていません。しかし、徐々に認知機能が衰えていく状況をくいとめて、認知機能を向上させ、脳機能を良好に維持して鍛えていくことで、認知症の発症を遅らせることができるのではないかと期待されています。</p><p> その効果的は方法のひとつが、身体活動を促進することであるとされています。運動は比較的に低コストで実施が可能であり、認知症予防の取組の中核的な役割を果たす可能性が示唆されています。しかし、運動によって脳賦活を促進することを目指すうえでは、単純な運動課題では脳活動の活性化を促すことは難しいと言わざるを得ません。そのため、認知機能の改善・維持に対して効果的な介入方法を実践するためには、筋力トレーニングおよび柔軟運動、有酸素運動、脳賦活を促進する運動、健康行動技法などを効率的に組み合わせることが必要であり、とりわけ認知課題を負荷しながら(二重課題、多重課題)の有酸素運動などによって、より効率的に脳の活性化を図ることが期待されています。</p><p> 本講演では、日常のなかでもできる認知症および要介護の予防のための実践方法を交えながら、基本的な考え方を紹介します。認知症の予防、介護予防のための基本的な考え方と日常のなかで実践できる予防方法を習得し、明日からの生活に活かしてみませんか。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390002184860634880
  • NII論文ID
    130007779437
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_0020
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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