障がい者スポーツにおけるスポーツ理学療法

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  • 鳥居 昭久
    愛知医療学院短期大学 リハビリテーション学科

抄録

<p> 2013年に2020東京パラリンピックが開催決定となった後、障がい者スポーツを取り巻く環境が変わり始めた。世界では、2001年の国際オリンピック委員会(IOC)と国際パラリンピック委員会(IPC)の合意、2008年北京大会以降、パラリンピックは文字通りオリンピックと同格のものとして扱われるようになり、競技力も高い水準になってきた。一方で、我が国では、障がい者スポーツ関係者以外においてはパラリンピックへの理解は高くはなく、スポーツ界でも障がい者スポーツは別の次元のことと感じられていたと言える。しかし、2013年以降、メディアへの露出度は年々高まり、多くの国民においてもパラリンピックを頂点とする競技スポーツとして障がい者スポーツへの関心が高まってきた。</p><p> そもそも、理学療法と障がい者スポーツの関係は以前から深いものである。1940年代に英国を中心に障がい者が積極的にスポーツに取り組み始めた背景は、故グッドマン博士がリハビリテーション医療にスポーツを取り入れたのが始まりであり、我が国においても、1960年代、故中村裕博士の下で多くの理学療法士が学び、各地の障がい者スポーツの現場において積極的な関わりを持ち現代に至っている。しかし、スポーツに取り組める環境が整った施設の中の患者と関係者に限定されていた取り組みが、一般病院における理学療法としての広がりは少なかった。また、日常生活活動能力の獲得後のステップと思われていたスポーツ活動に対しては、医療保険制度の範疇では限界があり、一般医療機関の理学療法士と、障がい者スポーツの間には未だ距離が感じられる。理学療法士協会の専門領域において、障がい者スポーツは生活支援領域に含まれていたことからも、我が国の理学療法士界の認識として、障がい者スポーツが“スポーツ理学療法”から遠かったことは否めない。</p><p> 障がい者スポーツは、“Rehabilitation Sports”“Recreation Sports”“Competitive Sports”の三つの側面を持ち、Rehabilitationの側面以外では、健常者とまったく同じであり、スポーツに取り組む人が、たまたま何らかの障害を有しているだけのことである。また、そもそも理学療法は“障害を有している人”が対象であり、スポーツ理学療法の対象に“障害を有している人”が含まれることに違和感は無い。加えて、元々障害が有るが故に、スポーツ活動をすることによって身体に何らかの負担が掛かり、スポーツ外傷や障害を発生する可能性が高まる。これを適切に予測、対応できるのは本来理学療法士の得意分野のはずなのである。</p><p> 近年、予防医学における理学療法の重要性が認識されているが、障がい者スポーツの世界においても、怪我を未然に防ぎ、より高いパフォーマンスを発揮するために必要な理学療法アプローチが必要である。 理学療法士がその専門性を活かし、特別支援学校や各地域における障がい者のスポーツ活動へ積極的な支援を行い、パラリンピックを頂点にした高い競技レベルの障がい者スポーツ選手の支援のみならず、全ての障がい者が普通にスポーツを楽しめる社会の構築に寄与すべきである。 今回、様々な角度から、スポーツ理学療法と障がい者スポーツの関わりについて述べる。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390002184860636032
  • NII論文ID
    130007779449
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_0010
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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