有明海西岸域への地下水由来の栄養塩供給量の評価

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タイトル別名
  • Estimation of Groundwater-Derived Nutrient Inputs into the West Coast of Ariake Bay
  • アリアケカイ セイガンイキ エ ノ チカスイ ユライ ノ エイヨウエン キョウキュウリョウ ノ ヒョウカ

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抄録

陸域から流入する栄養塩や淡水成分は，沿岸域の生物生産に大きな影響を与えるため，有明海では筑後川などの大河川による影響評価が多く行われてきている．しかしながら，同じく陸域から流入する淡水成分である地下水を考慮した評価は殆どされていない．本研究では，塩分のみでは河川水と地下水の影響を区別できないのに対して，有明海西岸域で採取した地下水中の222Rn 濃度が，河川に比べて約1～3桁高く，地下水の指標として有効であることを確認した．次に，調査時前の積算降水量と調査測線の水深の違いを標準化して，沿岸域地点間の222Rn 濃度分布の相対比較を可能とし，地域によって地下水の湧出量に差があることを明らかにした．更に，5つの定点連続観測で算出した地下水フラックスの絶対量と沿岸海水の222Rn 濃度に相関があることを利用し，有明海西岸の222Rn 濃度分布から，同海域における地下水の総湧出量を見積もった．この湧出量に，隣接する地下水中の栄養塩濃度を乗じて概算した有明海西岸域への地下水経由の栄養塩フラックスには地域的な違いがあり（溶存無機態窒素（DIN）：7．8～510kg−N day－1，溶存無機態リン（DIP）：0．4～3．9kg−P day－1），地下水中の栄養塩濃度が高く，地下水湧出量も多かった島原半島の沿岸域で高い値が見積もられた．このフラックスは，河川の影響が少ない有明海西岸域では重要な栄養塩源であり，二枚貝などの餌資源として重要な一次生産を高めるだけでなく，大型緑藻類の繁茂を促すなど，様々な生態系への影響が考えられる．

収録刊行物

  • 沿岸海洋研究

    沿岸海洋研究 50 (2), 157-167, 2013

    日本海洋学会　沿岸海洋研究会

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