メマンチンによる恐怖条件づけ記憶忘却の生化学的性状の解析

  • 石川 理絵
    東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科
  • 稲葉 洋芳
    東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科
  • 喜田 聡
    東京農業大学応用生物科学部バイオサイエンス学科 科学技術振興機構,CREST

書誌事項

タイトル別名
  • Biochemical Evidence that Treatment with Memantine Enhances Forgetting of Contextual Fear Memory in Mice
  • メマンチン ニ ヨル キョウフ ジョウケンズケ キオク ボウキャク ノ セイカガクテキ セイジョウ ノ カイセキ

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抄録

<p>心的外傷後ストレス障害(Post-traumatic stress disorder ; PTSD)は,恐怖記憶と関連する精神疾患であり,恐怖記憶忘却を促す方法の開発は,PTSDの認知行動療法として知られる持続エクスポージャー療法の改善に貢献するものと考えられる。本研究では,NMDA型グルタミン酸受容体のアンタゴニストであるメマンチン(MEM)投与により海馬神経新生促進を介して恐怖条件づけ文脈記憶の忘却が誘導されることに着目し,MEM投与による恐怖記憶忘却の性状を生化学的に明らかにすることを目的とした。まず,恐怖文脈条件づけ後からマウスに毎週計4週間MEMを投与することにより,恐怖条件づけ文脈記憶の忘却が誘導されることを行動レベルで確認した。この実験条件下で,初期応答遺伝子c-fosの発現誘導を指標にして,恐怖条件づけ文脈記憶忘却後の条件刺激提示に対する各脳領野の活性化状態を解析した結果,前頭前野,前帯状皮質及び扁桃体領野ではc-fos発現誘導が認められず,これら脳領野の活性化が起こらなくなることが示唆された。この結果から,MEM投与により恐怖記憶忘却が誘導されることが生化学的に初めて裏付けられた。興味深いことに,MEM投与後には,条件刺激提示に反応して海馬が強く不活性化されることも示され,この海馬の不活性化が記憶忘却を反映している可能性が考えられた。以上より,MEM投与により恐怖条件づけ文脈記憶の忘却が誘導されていることが生化学的にも初めて示唆され,また,恐怖条件づけ文脈記憶忘却に対する海馬の重要性が示唆された。</p>

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