ラニーニャ現象の持続に及ぼすオーストラリア冬季モンスーンの影響

  • 冨田 智彦
    熊本大学大学院先端科学研究部
  • 白井 大雅
    熊本大学大学院自然科学研究科
  • 山浦 剛
    理化学研究所計算科学研究センター 神戸大学都市安全研究センター

書誌事項

タイトル別名
  • Effects of the Australian Winter Monsoon on the Persistence of La Niña Events
  • Effects of the Australian Winter Monsoon on the Persistence of La Nina Events

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抄録

<p>一般にLa Niña(LN)イベントは、El Niño(EN)イベントよりも長く持続する。本研究は、客観解析データを用いてLNイベントの持続に及ぼすオーストラリア冬季モンスーン(AWM)の影響を調査する。通常、ENイベントは、3月から8月に生じる太平洋赤道域での偏差的なウォーカー循環の東方移動にともない終了する。しかしLNイベントでは、LNによって誘発された通常よりも強いAWMにより、3月から8月にかけて偏差的なウォーカー循環の上昇流域が、インドネシア海洋大陸(IMC)上に固定される。AWMの強さは、3月から8月の間のIMCとオーストラリア大陸北部(NAC)の間の表面温度差による。 LNは、降水量の増加とそこでの表層土壌水分量の増加によってNAC上の表面温度を低下させ、この表面温度差を大きくする。 LN期間中の多降水にともなう下向き短波放射の表面フラックスの減少もまたNACの表面温度を低下させることに寄与する。LNでは、AWMの強まりと偏差的なWalker循環の強まりが、IMCおよびその周辺域で強化された対流活動を通し互いに増強し合う。この正のフィードバック、本研究ではこれをLN-AWMフィードバックとよぶ、がLNイベントの期間を長くすると考えられる。ENではこのようなフィードバックが機能せず、ENイベントは3月から8月にかけて規則正しく終了する。</p>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 98 (1), 189-211, 2020

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (29)*注記

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