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- <一般演題抄録>浸潤性膵管癌における癌間質特性と造影CT 画像との関連解析
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抄録
【背景と目的】 膵癌は最も悪性度の高い腫瘍の一つである。近年の治療の進歩により、多くの悪性腫瘍は予後が改善されつつあるが、膵癌の予後は一向に改善がみられない。膵癌は、病理組織学的に膵管上皮を由来とする浸潤性膵管癌が大多数を占め る。この浸潤性膵管癌(以下、膵癌)は、癌細胞周囲に極めて豊富な線維化を伴うこと が特徴的である。この癌細胞周囲の線維性間質には、免疫組織化学的に α-smooth muscle actin (αSMA) を発現する癌関連線維芽細胞(cancer-associated fibroblast: CAF)とよばれる線維芽細胞が存在し、癌の浸潤と増殖に関与していることが明らかに なってきている。すなわち、膵癌はこの CAF が豊富であるために悪性度が高いと推測される。しかしながら、実際の臨床症例では、線維性間質が豊富な症例がある一方で、 間質に乏しく癌細胞が密な症例もしばしば経験する。我々は、このような膵癌の組織 学的多様性が術前の画像に反映されているのではないかと考え、CT 画像と病理組織との比較検討を行った。<br> 【方法】 当院で外科切除された膵癌 40 症例を対象とした。いずれの症例も術前にダイナミック CT 画像が当院で撮影されており、術後の病理診断で浸潤性膵管癌と診断された症例を用いた。病理組織学的には、免疫組織化学染色を用いて癌細胞の密度 と、癌間質におけるαSMA 陽性率を算出した。一方、ダイナミック CT 画像からは、造影効果の経時変化をTime intensity curve として描出し、各時相における CT 値や CT 値の変化率を算出した。<br> 【結果】 病理組織の結果とダイナミック CT の結果を統計的に解析した結果、癌細胞の密度と造影効果の経時変化との間には有意な相関はみられなかった。一方で、癌 間質のαSMA 陽性率と、造影開始から動脈相に至るまでの CT 値の傾きとの間には有意な相関がみられた。<br> 【考察】 癌間質のαSMA 陽性率と造影効果の経時変化との間に相関がみられた原因として、我々は CAF の関与を推定している。CAF は筋線維芽細胞の特性を有しているため、CAF が豊富な間質は流動性が高く造影剤が浸透しやすい環境にあると考察した。癌間質における CAF の機能についてはいまだ不明な点が多いが、本研究により術前の画像から癌間質の特性を予測できる可能性が示された。今後、術前化学療法の組織学的治療効果判定などに、本研究の結果を応用してゆきたいと考える。
収録刊行物
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- 弘前医学
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弘前医学 70 (2-4), 181-181, 2020
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390846609817860736
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- NII論文ID
- 130007818284
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- NII書誌ID
- AN00211444
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- ISSN
- 24344656
- 04391721
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- HANDLE
- 10129/00006976
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- IRDB
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可