石垣島白保地区における地下水の水質特性

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  • Chemical properties of groundwater in the Shiraho area of Ishigaki Island

抄録

<p>1.はじめに</p><p></p><p>本研究は、琉球石灰岩上に位置する石垣島白保地区の井戸を対象に集落内における地下水水質の空間特性を把握することを目的とした。また、地下水位および水質の連続観測(24時間)を行うことにより、潮位変化が地下水に与える影響について検討することを目的とした。</p><p></p><p>2.石垣島白保地区の井戸について</p><p></p><p>白保集落では、かつて井戸を掘削してそこから汲み上げた地下水を生活用水に利用していた。水道が普及した現在でも、その名残から井戸は「命の水」として住民の信仰対象となっており、集落内には少なくとも80本以上の井戸が残されている。</p><p></p><p>3.調査方法</p><p></p><p> 本研究では白保集落内の井戸9地点を対象に、測水調査を行った。採水地点およびヘキサダイヤグラムを図1に示す。調査は、2019年3月19日〜21日および2019年8月29日〜31日に実施した。現地では気温、水温、電気伝導度(EC)、地下水位を測定した。8月の調査では、汀線から内陸部にかけての水質および水位変化を把握するため調査測線を設定して3地点(No.1〜No.3)で24時間の連続観測を実施した。その際、ECと地下水位の測定にはロガーを用いて5分間隔で測定を行った。測定期間は2019年8月29日の19時から2019年8月30日19時であり、採水については2時間毎に行った。</p><p></p><p>4.水質組成</p><p></p><p>今回採水調査を行った全地点で、Na-Cl型の水質組成を示していた。Na⁺とCl⁻濃度がとくに高い地点は汀線寄りのNo.1、No.4とNo.5であった。それぞれの井戸から汀線までの距離は、約130m, 200m, 150mで、各標高は約5.6m、5.3m、5.8mである。距離でみるとNo.4とNo.5はNo.1より汀線から距離があるが、より強く海水の影響が表われている。これはNo.1の調査時が干潮であったため、No.4、No.5よりも濃度が低くなったと推察される。No.2、No.6、No.9およびNo.10は、汀線から約250m〜370mほど内陸に位置する井戸であり、標高は約7.0m〜8.0mである。汀線に近い井戸に比べ、Na⁺とCl-やその他の多くの成分濃度が大幅に減少する中、Ca2+とHCO3-については大きな変化は見られず、むしろわずかに増加している。最も内陸寄りのNo.3とNo.7はそれぞれ汀線から約370mと450m離れており、標高は約8.8mと9.0mである。この2地点ではさらに溶存成分量が減少するが、Ca2+とHCO3-およびNO₃-濃度にはほとんど変化は見られない(図1)。本地域は琉球石灰岩分布域であり、集落背後には畑地が広がることから、この3成分は陸域の地下水を特徴づける成分であると考えられる。海側になると、Na+、K+、Mg2+、Cl-、SO42-濃度が高くなり、内陸側になるとNa-Cl型ではあるが、全体に占めるCa2+とHCO3-濃度が汀線付近よりも高くなり、海水の影響度が低くなることが判明した。</p><p></p><p>5.24時間観測における水質変化</p><p></p><p> 潮位変化と塩化物イオンの経時変化結果を図2に示す。No.1は3地点の中で最も水質に変化がみられた。塩化物イオンの最高値は8月30日7時の743.8㎎/Lである。No.2は潮位の変化と合わずに遅れて水質に変化がみられた。No.3は多少の水質変化はみられるが、他の2地点と比べると潮汐の影響はあまり受けていないと推察される。今回得られたデータにより、汀線から約130m〜200m内陸に入った井戸まで潮位変化に伴う沿岸地下水の溶存成分への影響が確認された。</p><p></p><p>謝辞</p><p></p><p> 今回の調査にあたり,白保集落の柳田氏をはじめとして現地の方々には多大なるご協力を賜わりました。記して感謝の意を表します。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390846609819376384
  • NII論文ID
    130007822147
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_222
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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