中山間地域におけるUAVを用いた水稲の生育差に関する空間分析

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書誌事項

タイトル別名
  • Spatial analysis on difference of rice plant growth using UAV in mountainous area
  • – A case study of Fukuyama-shinden in Uonuma City, Niigata Prefecture, Japan –
  • ―新潟県魚沼市福山新田を事例として―

抄録

<p>中山間地域の農業は、少子高齢化と人口減少の影響で全国的な担い手不足に陥っている。担い手確保の1つの手段としては、総務省が実施する地域おこし協力隊の制度等を利用し、いわゆるU・Iターンの移住者を募る方法が考えられる。しかし、中山間地域には様々な自然条件下の圃場が存在し、新規の移住者がその地域に適した栽培方法を確立させるには長期間の試行錯誤が必要である。UAVによる空撮画像を利用した農作物の生育診断は、そうした移住者が試行錯誤する上での補助情報としての利用可能性が考えられる。</p><p></p><p>そこで本研究では、UAVによる空撮画像の、条件の異なる複数の圃場での空間分析を通して、微地形などの自然環境および施肥状況等の人為的な諸条件が農作物の生育に与える影響を明らかにする。</p><p></p><p>研究対象品目は、先行研究の蓄積が多く方法論に一定の信頼を置くことができる水稲とする。また、研究対象地域はコシヒカリの単作地帯である新潟県魚沼市福山新田という集落内の9圃場で、2019年6月3日から2019年9月7日までに5回の撮影を行っている。</p><p></p><p>手法としては、まず、UAV(DJI Phantom3 Professional)付属のカメラで圃場の可視画像を取得する。次に、近赤外フィルタ(FUJIFILM IR76)を利用した改造カメラ(Canon PowerShot S90)を装着し、近赤外画像を取得する。その後、取得した画像の補正処理を行った上で、NDVI・GRVIのメッシュマップを作成する。そして、メッシュマップの値の分布や時間変化と、生産者から得た実際の生育量や収量との対応関係を検証する。</p><p></p><p>結果としては、本研究で使用したNDVI・GRVIは生産者が感じる生育差と概ね一致しており、その中でNDVI・GRVIの分布と実際の生育差との対応関係が顕著に表れていたのは、水持ちが悪い地形条件により水不足に陥っていた圃場と、日射量不足により生育の遅れがみられた圃場であった。また、各圃場における植生指数の平均値を比較すると、化学肥料を使用する生産者の値が有機栽培を行う生産者よりも大きかった。さらに、各圃場における植生指数の平均値と実際の収量との間には高い相関関係がみられた。一方で、有機肥料を自作する、育苗の際に中苗以上にしてから田植えをするなど、栽培方法にこだわりを持っている生産者もみられたが、そうした個々の工夫は植生指数の差異に大きく表れてはいなかった。</p><p></p><p>本研究では、UAVによる空間分析を利用して実際の生育差やその要因の一部を抽出することができたため、中山間地域における水稲栽培の最適化のためにどのような作業が必要である、あるいは不要であるのか、といった判断の材料となる可能性を示すことができた。ただし、より確度の高い情報とするためには、今後のデータの蓄積が求められる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134842588800
  • NII論文ID
    130007822187
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_292
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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