パタゴニア・ヴィエドマ氷河における氷食基盤岩地形と炭酸塩堆積物
書誌事項
- タイトル別名
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- Subglacial bedforms and carbonate deposits at Glaciar Viedma, Patagonia
抄録
<p>1.はじめに</p><p> パタゴニア氷原から溢流する氷河は近年急速に後退しており,氷河周縁で基盤岩が急速に露出し始めている.その一つであるビエドマ氷河の末端域での現地調査により,炭酸塩沈積物が氷食岩盤表面に固結しているのを発見した(図1).炭酸塩沈積物の存在は,氷底で炭酸塩を溶解した水流がかつてあったことを示唆する.一方,1968と1981年に航空写真が撮影されており,それを使えば,この地表面を覆っていた当時の氷河の形状を数値標高モデルで復元することが可能である.また,現地調査時にはドローンで露岩域を空撮しており,これでDEMを作成できる.氷河表面高度と基盤岩標高から当時の氷体厚を算出し,氷底の圧力場を見積もることで,炭酸塩が沈積する物理・化学条件を検討することが可能となる.本研究では,融解直前の氷河の履歴とも照合しながら,当時の氷河の振る舞いを復元することを目指している.</p><p></p><p>2.炭酸塩堆積物</p><p> 現地で採取した炭酸塩堆積物は,流線型の氷河侵食痕の表面に数センチメートルの厚さで沈積しており,特に,氷河の流動方向から見て下流側に階段状に落ち込んだlee-sideによく発達している(図1d).ものによっては畝(fullow)の形状を示し(図1h),水流が関与したことを示唆している.</p><p> 採取したサンプルを,顕微ラマン分光分析(HORIBA Symophony II; Laser Quantam Co. 532 nm laser)とX 線回折(Bruker AXS)で同定した結果,主にCaCO3で構成されることが明らかとなった.これは,氷河底面での氷融解・再凍結が基盤岩からのCaCO3の溶解と堆積を引き起こすからであろうと考えられる.</p><p></p><p>3.基盤地形</p><p> 基盤岩にはdrumlin, tadpole rock, muschelbruck, furrow, potholeなどの流線型氷食地形が観察され,ドローン空撮写真のSfM処理によりDEMを作成して解析したところ,計135個のdrumlinが検出された.</p><p> それらの平均比高,面積,伸長方向角はそれぞれ 3.5 m, 181 m, N79˚Eであり,伸長方向角は1986年の氷河流動方向(N30˚E)とは異なる.しかし,1968と1981年の航空写真から作成した氷河表面DEMと基盤地形DEMから氷底水ポテンシャル面を復元したところ,氷食地形の伸長方向と水流の勾配ベクトルが一致することがわかった.この結果は,氷底水流により氷食地形が生成されたことを示唆するものである.</p><p></p><p>4.今後の課題</p><p> 今後は,氷河の融解過程に応じて氷河形状を変化させ,氷底水圧,温度,歪み速度を計算し,氷河流動速度を推定するとともに,これらの結果を人工衛星画像から算出した流動速度と比較して氷河 変動に底面プロセスが与えた影響を考察していく予定である.</p>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2020s (0), 53-, 2020
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390565134842760704
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- NII論文ID
- 130007822278
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可