子宮悪性腫瘍との鑑別が困難であったxanthogranulomatous inflammationの1症例と文献的考察

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タイトル別名
  • Xanthogranulomatous inflammation which was difficult to distinguish from the uterine malignant tumor: a case report and literature review
  • シキュウ アクセイ シュヨウ ト ノ カンベツ ガ コンナン デ アッタ xanthogranulomatous inflammation ノ 1 ショウレイ ト ブンケンテキ コウサツ

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抄録

<p>Xanthogranulomatous inflammation(XGI;黄色肉芽腫性炎症)は,脂質に富む胞体をもつ組織球の集簇を主体とした炎症性肉芽腫の総称で,女性生殖器領域での報告はまれである.われわれは急速に増大し子宮悪性腫瘍との鑑別が困難であったXGIの1例を経験した.症例は78歳,3産.全身倦怠感,嘔気,頭痛のため当院受診.肺炎の診断でタゾバクタム/ピペラシリンを投与された.短期間での子宮の増大を認め,当科を受診した.性器出血や腹痛はなく,帯下は黄濁色であった.子宮内膜細胞診negativeであり,腟分泌物培養検査でKlebsiella pneumoniaeが検出された.MRI検査では子宮角部から右卵巣まで連続する腫瘍性病変を認め,T2強調像で高~低信号が混在,T1強調像で辺縁に淡い高信号を認めた.同部位に著明な拡散制限と一部に強い造影効果を認めた.子宮悪性腫瘍を否定できず,開腹術を施行した.開腹時子宮体部は右子宮付属器と一塊となり,小腸・結腸に強固に癒着していた.洗浄腹水細胞診は陰性であり,腹式単純子宮全摘術,両側子宮付属器切除術,大網部分切除術,小腸部分切除術を施行した.腹水培養検査でタゾバクタム/ピペラシリンに感受性をもつKlebsiella pneumoniaeが検出された.摘出標本では肉眼的に右付属器から子宮体部にかけて黄白色の境界不明瞭な腫瘤を認めた.病理組織学的検査では泡沫組織球やリンパ球,形質細胞,好中球などの炎症細胞の集簇を認め,XGIの診断となった.病変の主座は右付属器であり,同部位から連続して子宮漿膜から筋層,および癒着していた小腸の漿膜側から粘膜下層にかけてもXGIを認めた.XGIは術前の悪性腫瘍との鑑別が困難であり,治療方針もいまだ確立されていないため,さらなる知見の集積が期待される.〔産婦の進歩72(1):1-7,2020(令和2年2月)〕</p>

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