リン酸化CNFの調製とその用途開発

  • 轟 雄右
    王子ホールディングス株式会社 イノベーション推進本部 CNF創造センター

書誌事項

タイトル別名
  • Preparation of Phosphorylated Cellulose Nanofiber and Its Utilization
  • リンサンカ CNF ノ チョウセイ ト ソノ ヨウト カイハツ

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抄録

<p>セルロースナノファイバー(CNF)は,セルロース分子鎖が木材パルプ中で規則的に配列した結晶性の繊維を単離することで得られる。CNFは循環型材料であるだけでなく,ユニークな特徴を有するため,その用途開発が期待されている。針葉樹クラフトパルプをリン酸エステル化処理したのち機械処理することで,リン酸基が結晶の表面に導入されたCNFが水中で孤立分散する。分散体は特異なレオロジー特性を有し,リン酸基は分散体に幅広いpH領域での分散安定性をもたらす。この特徴は,孤立分散したCNFと粗大な繊維とが共存した分散体でも利用できる。リン酸化CNF水分散体は,その高透明,高粘度,高分散能を活かし,化粧品用増粘分散剤として製品化された。また,増粘分散性を活かした用途として,コンクリート圧送先行剤も挙げられる。この先行剤は,建設現場で生コンクリートをポンプで圧力をかけて送る際に,配管内に均一な潤滑層を形成して配管の閉塞を防ぐ製品である。リン酸化CNFは,さらなる改質によって有機溶剤中に分散が可能となる。このCNFは,パウダー状で提供され,多様な有機溶剤に分散し,分散液は水系と共通した特性を有する。これにより,溶剤系で利用される用途での検討が可能となった。一方で,我々はCNFが孤立分散した水分散体から,CNFが緻密に絡まったシートを製造できる。このシートは,高強度,熱寸法安定性,フレキシブル性を有し,電子デバイス基板用途への適用が期待される。また今般,シート上の微細パターニングが実現した。我々はリン酸化CNFのさらなる用途開発を進めていく。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 74 (2), 116-120, 2020

    紙パルプ技術協会

参考文献 (15)*注記

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