変革期に挑む九州の底力(第18回)デフレ時代を駆け抜けた九州経済

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  • 連載:変革期に挑む九州の底力 -第17 回- デフレ時代を駆け抜けた九州経済
  • ヘンカクキ ニ イドム キュウシュウ ノ ソコジカラ(ダイ18カイ)デフレ ジダイ オ カケヌケタ キュウシュウ ケイザイ

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2014 年4 月1 日,17 年ぶりに消費税増税が実施された。みずほ総合研究所の試算によると,夫婦と子ども2 人,年収500 万円の世帯で増税による2014 年度の負担増は8 万3,482 円に達し,経済対策による子育て世帯向けの現金給付を考慮しても,年間7 万円程度の実質負担増になるという。新年度の家計防衛の観点から「駆け込み需要」が活発化したのも道理である。2013 年末までの「駆込み需要」と言えば,百貨店で100 万円もする高級腕時計が月に100 個以上売れたとか,大都市圏で億ション着工が活発化しているとか,高級輸入車販売が活況を呈しているといった富裕層のバブリーな話題ばかりが目立っていたが,増税目前となった2014 年入り後は,公共料金や鉄道,路線バス,高速バス,都市高速料金,はたまた福岡市営渡船や三瀬トンネル通行料金等々の値上げが発表・検討されているというニュースを見聞きするようになって,定期券や回数券,トイレットペーパーに代表される日用消耗品のまとめ買いなどが見られるようになり慌ただしくなった。3 月上旬に,駆け込み需要とは縁がないように思える「甲冑」生産全国シェア9 割を誇る「丸武産業」(鹿児島県薩摩川内市)を訪ねたら,2 月下旬から端午の節句用の兜の受注が例年以上に増えたという。NHK 大河ドラマ「軍師 官兵衛」関連のイベント用甲冑も「GWの博多どんたくで着用したいが,増税前の3 月中に納品して欲しい」といった注文まで舞い込んで大童だった。ハンドメイドで受注生産する伝統工芸品は,熟練職人の数に限りがあるため,駆け込み需要への対応には限界がある。このような駆け込み需要は,様々な中小企業に影響を与えたようだ。 しかし,これらの駆け込み需要は,何れも「需要の先食い」に違いはない。新年度に消費税率が物価に上乗せされる(一般には「増税率-1%ポイント」程度のインフレになると予想されている)ので,賃上げが小幅にとどまる場合は,駆け込み需要の反動に加えて物価高による需要の低迷によって,再びデフレ時代に逆戻りすることも十分考えられる。

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