「羅生門問題」からみた被災地の復興過程

書誌事項

タイトル別名
  • The Disaster Recovery Process and Rashomon Effect
  • 「羅生門問題」からみた被災地の復興過程 : 茨城県大洗町を例に
  • 「 ラショウモン モンダイ 」 カラ ミタ ヒサイチ ノ フッコウ カテイ : イバラキケン オオアライマチ オ レイ ニ
  • The Case of Oarai Town, Ibaraki
  • 茨城県大洗町を例に

この論文をさがす

抄録

東日本大震災において福島原発事故の影響は大きく,災害からの復興をより複雑かつ困難にしている。特に,放射能汚染の有無や程度について専門家の間でも判断が分かれる中,何が「事実」で何が「虚偽」なのか,その境界が曖昧となり,そのため,風評被害の様相もこれまでよりも複雑化している。本研究では,まず,東日本大震災における風評被害の実態について概観し,次に,風評被害に悩まされてきた地域の一つである茨城県大洗町において,風評被害に対する受けとめ方や,打開のための取り組みを中心に,現地の住民,マスメディア関係者に対するインタビュー調査を含む綿密なフィールド調査を実施した。その結果,放射能汚染の「あり/なし」をめぐって顕在化している,しかしより小さな「羅生門問題」が,「放射能汚染の視点から見た大洗町/それ以外の視点から見た大洗町」という,より重要で大きな「羅生門問題」を覆い隠している事実が明らかとなった。この構造を克服し,風評被害を乗り越えるためには,放射能汚染をめぐる「安全/危険」に焦点を当てた「危機対応」型のアプローチだけではなく,人気アニメーションと連携した町の活性化事業や若手漁師による新しい漁業モデルの創造の試みなど,放射能汚染の問題とは関係性の薄い契機に光を当てる「契機創造」型のアプローチがむしろ有効性が高いことが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ