ウランバートル・ゲル地区における居住者の就労と生活戦略

書誌事項

タイトル別名
  • Working Practices and Life Strategies of <i>Ger</i> Area Residents in Ulaanbaatar
  • ウランバートル ・ ゲル チク ニ オケル キョジュウシャ ノ シュウロウ ト セイカツ センリャク

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抄録

<p>本稿では,ゲル地区の存立と不可分の関係にある居住者の生活に焦点をあて,現在の生活が過去の経歴および将来への展望といかに関係するかを検討した。ウランバートルの労働市場は男女差や年齢規範などの制約が大きく,人々が職を得るには学歴や有力な人脈の有無にも左右される。従来の研究では画一的に捉えられてきたゲル地区居住者が従事する仕事は,実際には不安定な職から資格職まで多岐にわたるが,いずれも夫婦どちらかの片働きで生活を成り立たせることは難しく,生活水準の維持・向上のために夫婦共働きや様々な副業が組合わせられる。個人の職歴は移住歴や学歴に規定されるが,世帯形成後の生活や今後の生活の描き方もまた,現在までの経歴に影響される。なかでも,妻が高等教育機関への進学を目的に移住し,現在も安定した仕事に就く世帯では,アパートへの転居や子どもの教育など,将来設計が具体的に示される傾向にある。世帯が描く将来像の実現のためには,海外での就労も現実的な選択肢と位置づけられる。人々の住まう実践は,過去に規定されつつ将来に向けて展開し,その空間スケールはウランバートルやモンゴルの中にとどまらない。ゲル地区における生活は,外に開かれた多様で重層的な関係によって構築されている。一方で,生活を構築するために活用可能な資源が世帯によって異なる現状からは,今後ゲル地区において世代交代が進む過程で階層分化が発現する可能性が示唆される。</p>

収録刊行物

  • 人文地理

    人文地理 72 (2), 107-129, 2020

    一般社団法人 人文地理学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (7)*注記

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