体外受精で妊娠成立し硬膜外麻酔を併用し経腟分娩に成功した高位脊髄損傷の1例

書誌事項

タイトル別名
  • A case of transvaginal delivery using epidual anesthesia in a patient with high spinal cord injury
  • 症例報告 体外受精で妊娠成立し硬膜外麻酔を併用し経腟分娩に成功した高位脊髄損傷の1例
  • ショウレイ ホウコク タイガイ ジュセイ デ ニンシン セイリツ シコウマク ガイ マスイ オ ヘイヨウ シ ケイチツブンベン ニ セイコウ シタ コウイ セキズイ ソンショウ ノ 1レイ

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抄録

<p>近年,救命医学の進歩に伴い,脊髄損傷女性の妊娠は増加傾向にあるが,わが国での分娩症例の報告はまだ少ない.今回われわれは,硬膜外麻酔を併用し経腟分娩に成功した高位脊髄損傷症例を経験した.症例は38歳,未経妊.21歳時に交通事故で第3胸椎を損傷し,第4,5胸椎後方固定術を施行された.受傷後は月経再開し性交渉も可能であった.結婚後,挙児希望のため他院を受診し,タイミング療法では妊娠に至らず,当院の体外受精で妊娠が成立した.妊娠成立後は切迫早産,尿路感染や自律神経過反射(AH)の発症に留意しながら妊婦健診を行い,自覚症状の乏しい患者に子宮収縮や前期破水などを見落とさないための細やかな教育を行った.妊娠31週から切迫早産のため入院管理し,安定後は妊娠37週以降での計画分娩とした.経腟分娩に際して,AH予防のために硬膜外麻酔を施行し,あらかじめ取り決め事項を作成し,他科との連携を密に行った.妊娠37週3日から2日間かけて頸管拡張を行い,陣痛誘発を計画していた妊娠37週5日に自然陣痛が発来し,取り決め事項に沿い分娩管理を開始した.起こりうる合併症をあらかじめ想定し,他科と横断的な連携をはかり,母児共に良好な転帰を迎えることができた.陣痛発来後の早期に硬膜外麻酔を開始したにもかかわらずAHの合併を認め,降圧剤投与を行う必要はあったが,取り決め事項に沿った迅速な対応で脳卒中などの重症AHを発症することなく経腟分娩に成功した.〔産婦の進歩72(3):280-286,2020(令和2年8月)〕</p>

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