ヒトiPS細胞由来心房筋様細胞を用いた新規心毒性評価系の有用性

  • 本田 弥生
    大日本住友製薬株式会社 株式会社住化分析センター テクニカルソルーション本部 大阪ラボラトリー バイオアナリシスグループ

書誌事項

タイトル別名
  • Availability of a novel cardiotoxicity evaluation system using human induced pluripotent stem cell-derived atrial-like myocytes
  • ヒト iPS サイボウ ユライ シンボウキン ヨウ サイボウ オ モチイタ シンキシン ドクセイ ヒョウカケイ ノ ユウヨウセイ

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抄録

<p>心房性不整脈は年々増加していることが報告されており,今後も高齢化に伴い増加の一途をたどると推測されている.心房性不整脈発症の原因の一つに加齢があることから,この不整脈の誘発の背景には高齢者における複数の薬剤の服用が関与している可能性が考えられる.しかし,これまで薬剤誘発性の心房性不整脈をin vitroで検出する方法は確立されていないため詳細は不明である.そこで今回,我々はヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)より心房筋様細胞を分化誘導し,その特性を明らかにするとともに,薬剤応答性について検証した.心房筋様細胞は心筋分化誘導の過程でレチノイン酸(RA)を添加することで誘導し,RA未処理の細胞と比較検討した.遺伝子発現および膜電位解析において,RA処理した細胞は心房筋様の,RA未処理の細胞は心室筋様の特性を有することが確認できた.また,心房筋様細胞では心房性不整脈であるリエントリー様の伝導障害を誘発することも確認した.次に,本細胞に対する種々のイオンチャネル阻害薬の応答性を検討したところ,心房筋で特異的に存在する超急速活性化遅延整流カリウムイオン電流(IKur)の阻害薬の適用により,心房筋様細胞でのみPWD30cF(30%再分極時の膜電位幅を拍動間隔で補正した値)の延長が認められた.一方,心室筋において特徴的な不整脈(EAD)の発現に関係することが知られている急速活性化遅延整流カリウムイオン電流(IKr)阻害薬に対しては,RA未処理の細胞でのみEAD発現の濃度依存的な増加が認められており,両細胞でそれぞれの心筋に特徴的な反応を確認することができた.これらのことより,ヒトiPS細胞由来心房筋様細胞を用いた本評価系は,薬剤誘発性の心房性不整脈を検出できる有用な評価系であると考えられた.</p>

収録刊行物

  • 日本薬理学雑誌

    日本薬理学雑誌 155 (5), 303-308, 2020

    公益社団法人 日本薬理学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (15)*注記

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