トランス脂肪酸による細胞老化の促進作用機構および関連疾患発症機序の解明

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タイトル別名
  • Molecular mechanisms and pathological consequences of the pro-senescence effects of <i>trans</i>-fatty acids

抄録

<p>トランス脂肪酸は、炭素原子間にトランス型の二重結合を有する脂肪酸の総称で、生体内では産生されず、食品を通して摂取される。疫学的知見等から、トランス脂肪酸摂取と動脈硬化症や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの加齢性疾患発症との関連が示唆されているが、具体的な疾患発症機序は不明である。そこで本研究では、上記関連疾患の発症や病態進行と密接に関連するDNA損傷に着目し、トランス脂肪酸とDNA損傷に伴って誘導される細胞老化の関連性について検証を行った。</p><p>ヒト骨肉腫U2OS細胞にDNA損傷誘導剤(シスプラチン)を処置して細胞老化を誘導したところ、エライジン酸(食品中含有量が最も多いトランス脂肪酸)の前処置条件下では、老化マーカーSA-β-Galの陽性細胞数が著しく増加した。細胞老化時には、炎症性サイトカイン等が発現誘導・分泌される細胞老化随伴分泌現象(SASP)が起きるが、実際我々は、エライジン酸がSASP因子IL-6やIL-8のmRNAを上昇させ、細胞老化や炎症を強く促進することを見出した。一方、エライジン酸のシス異性体に相当するオレイン酸の前処置条件下では、上記のような変化は認められなかった。さらに、細胞老化誘導の主要転写因子p53の寄与について、p53欠損細胞を樹立・解析したところ、p53欠損時にはエライジン酸による細胞老化促進作用が顕著に抑制された。また、C57BL/6マウス(8週齢オス)にトランス脂肪酸を含有する高脂肪食を12週間給餌したところ、通常食あるいはトランス脂肪酸不含の高脂肪食摂取群と比較し、肝臓の脂肪蓄積およびSA-β-Gal陽性細胞数の増加が認められた。</p><p>以上の結果から、エライジン酸をはじめとしたトランス脂肪酸は、DNA損傷時のp53依存的なシグナル経路を介して、細胞老化やSASP(炎症誘導)を促進することで、関連疾患発症に寄与することが示唆された。</p>

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詳細情報

  • CRID
    1390285697591481600
  • NII論文ID
    130007898244
  • DOI
    10.14869/toxpt.47.1.0_o-3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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