序文

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抄録

<p> 1990年代に普及した腹腔鏡手術は, いまや多くの疾患における標準術式となっている. それまでの開放手術と比較して, より低侵襲で整容性の高い術式であると同時に安全性が高く教育的に優れていたことが広く受け入れられた理由であろう. 一方, 標準術式を確立した術者が, さらなる低侵襲性と整容性を目指して4本のポートを3本に, いや一個の創でもできるのではないか, という挑戦心が芽生えたことは想像に難くない.</p><p> このように, 2000年代後半からLESSが盛んに行われるようになるのだが, 残念ながら広く普及しているとは言い難い状況にある. ここではその要因についての議論は避けるが, 一つにはLESSは難しいものという固定観念に捕らわれていることが挙げられるであろう. LESSとはlaparoendoscopic single-site surgeryの略であるが, 他にも多くの呼称が存在する. SILS (single incision laparoscopic surgery) はほぼ同義だが, NOTES (natural orifice transluminal endoscopic surgery), RPS (reduced port surgery), needlescopic surgeryなどそれぞれ微妙にニュアンスは異なるものの基本的には同じカテゴリーといえる. 日本語ではおしなべて単孔式腹腔鏡手術と呼ばれているのも誤解の元なのだが (減孔式という言い方もあるにはあるが), “一つのポートから手術するなんて自分には難しすぎる”, とずいぶんハードルが高くなってしまっているようである.</p><p> さて, 原点に返って考えてみる. もちろん, 究極の理想は創のない手術ではある. しかし, 従来の腹腔鏡手術から1本ポートを減らしたり細径化したりすることだけでも, 逆に単一創に1本ポートを追加しても安全性や操作性が高まれば, 患者に対してはメリットがある. LESSという略語には, “LESS” invasive laparoscopic surgeryという意味も込められているものと推察する. LESS=単孔式という呪縛を解き, もっと柔軟性に富んだ術式として身近なものに感じていただければと思う.</p><p> 今回, 寄稿をお願いした4名の先生方はいずれもLESSの達人であり, それぞれ「匠の技」をご披露いただきたいところ, 本特集では少し視点を変えて, より容易に, かつ安全にLESSを導入するための教育的なポイントを中心にご執筆いただいた. LESS指導中あるいは挑戦中の先生方はもとより, “LESS食べず嫌い”や“LESS休止中”の先生方にも, LESSのハードルが下がったと多少なりとも感じていただければ幸いである.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390004951542781312
  • NII論文ID
    130007949160
  • DOI
    10.11302/jsejje.33.185
  • ISSN
    21874700
    21861889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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