日本における成熟社会論の知的起源

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タイトル別名
  • Intellectual Origins of Japanese Mature Society Theory
  • ニホン ニ オケル セイジュク シャカイロン ノ チテキ キゲン

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抄録

<p>本稿は日本独自の成熟社会論の起源を一九七五年に見出し、その主要な理論家として経済学者の村上泰亮に着目する。世界的に高度経済成長が終わりを迎えつつあるなか、英国のデニス・ガボールの 『成熟社会』 やローマ・クラブによる 『成長の限界』 の議論が日本に紹介されるが、やがて日本でも独自の成熟社会論の展開が見られるようになる。とくに村上泰亮は、産業化後の 「豊かな社会」 への対応という世界共通の課題に、欧米モデルからの転換という日本独自の課題を重ねて捉えた点に特徴がある。村上はこの時期の日本社会の転換を、個人主義の台頭による伝統的な集団主義の変質として捉え、それに基づく新たな公私ルールの確立を目指した。そのような問題意識を本格的に展開したのが村上の産業社会論であり、ここで村上は混合経済の必然性、多元主義、特に文化の領域の一定の自立性を強調する社会理論を構築した。そのような問題意識の上に村上は、日本における保守回帰を予測し、さらに 「イエ」 社会を基軸とする独特の日本文化論を展開した。政治・経済・文化の関係を総合的に把握しようとした村上の理論的営為は、今日なお重要な示唆を我々に与えてくれる。</p>

収録刊行物

  • 年報政治学

    年報政治学 70 (2), 2_143-2_163, 2019

    日本政治学会

参考文献 (4)*注記

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