多職種連携を志向する薬事支援の在り方

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抄録

<p>災害時の薬剤師による活動は、急性期の医療調整業務、亜急性期の薬剤供給 業務(救護所での調剤)や公衆衛生管理、慢性期の保険医療に基づく被災者支 援、など災害のフェーズに応じて刻々と変化する。災害救助法(昭和 22 年 10月18 日法律第 118 号)において、医療の救助期間は災害発生の日から14日以内である と一般基準として定められている。また、被災地であっても通常の保険診療等によ る医療が行われている場合には、法による医療を実施する必要はない。即ち、災 害の影響で当該医療機関が受入可能な患者数をはるかに超える患者が発生して いる場合、被災地に派遣される薬剤師は災害発生の日から14日を基準日として災 害医療から保険診療への体制を整える必要がある)。とくに亜急性期での活動は、 初期と後期では薬剤師に求められる活動が大きく異なる。</p><p>亜急性期の初期は、限られた医療資源を最大限に活用して救護に携わることを 原則として医療救護所での調剤・服薬指導、一般用医薬品の供給や感染症対策 を行う。とくに、災害時だからこそ救護班からの処方に対する疑義照会は慎重に行 わなければならない。また、感染症対策のひとつとして公衆衛生を司る職種として 薬剤師も適切な対応(トイレの消毒方法、手洗い場の設置、衛生的手洗いの啓発 など)を行った後に避難所の自治に繋ぐことも考慮すべきである。後期は、被災地 内の医療提供体制が災害診療から保険診療に移行するに伴い、保険医療機関か らの院外処方せんによる対応を考慮しなければならない。後期の医薬品供給体制 は、地域の医療機関での保険診療へ繋ぐための準備として、仮設薬局内の医薬 品の在庫管理、被災地域で診療を再開した医療機関リストの作成、被災者が医療 機関へアクセスする手段の確立、などへの転換が求められる。慢性期は地域保健 医療体制の復興に繋げる活動が主となる。二次避難所のアセスメントを行い、被災 者を見て、声を聴き、地域の保健医療機関へ繋ぐ。復旧・復興期の避難所や仮設 住宅等での生活において、被災者がこころの健康を保つためには、地域コミュニティ とのつながりが非常に重要である。阪神淡路大震災以降、仮設住宅などでの被災 後の生活において、被災前の地域コミュニティが分断してしまった、という事例が多 く報告されており、薬剤師は保健師や支援団体との連携を図る必要がある。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390849931317105152
  • NII論文ID
    130007962390
  • DOI
    10.34597/npc.2020.1.0_s1-4
  • ISSN
    24358460
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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