嗅覚刺激による睡眠時ブラキシズムの抑制

  • 大川 穣
    明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野
  • 松本 大慶
    明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野
  • 大川 周治
    明海大学歯学部機能保存回復学講座歯科補綴学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Inhibitory Effect of Olfactory Stimuli on Sleep Bruxism
  • キュウカク シゲキ ニ ヨル スイミンジ ブラキシズム ノ ヨクセイ

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抄録

<p>睡眠時ブラキシズム(Sleep Bruxism:SB)は睡眠障害の一病態とされている.また,SBは睡眠障害に関連して発症する顎運動異常であることから,睡眠障害を改善することによりSBは改善されるのではないかと考えた.睡眠障害に対する治療には,一般的に薬物療法(睡眠薬や抗うつ薬など)が実施されている.しかし,薬物療法は副作用が強いことから,補完療法である香りによる嗅覚刺激に注目した.本研究の目的は,香りを応用した嗅覚刺激がSBに及ぼす影響を明らかにすることである.健常有歯顎者26名(男性21名,女性5名,平均年齢24.8±3.2歳)を被験者として選択し,実験開始前に夜間睡眠時ポリソムノグラフ(PSG)を用いて26名全員がSBを発現することを確認した.嗅覚刺激にはラベンダー(LA),およびコントロール(CO)として脱イオン水を用いた.被験者26名をLA群とCO群にランダムに振り分け,嗅覚刺激を交互に付与するクロスオーバー試験を行った.初夜効果の影響を排除するとともに,Baselineのデータを採取する目的で,3夜連続によるPSGおよび携帯型高精度筋電計を用いた咬筋EMG測定を行った。クロスオーバーする際に各条件の持ち越し効果を消去するため,1週間のWashout期間ののち,嗅覚刺激の種類を入れ替えて2夜連続で,同様にPSGとEMGの測定を行った.PSGの分析により睡眠変数を算出し,咬筋EMGの分析からSB event数を算出した.PSQIを用いたアンケート調査により,被験者をFeel good sleep group,Feel bad sleep groupにグループ分けし,各群のSB event数を比較,検討した.その結果,以下の結論を得た.</p><p>1.ラベンダーを応用した嗅覚刺激は6項目中5項目の睡眠変数において,睡眠状態の有意な改善を示した.</p><p>2.BaselineおよびCO群と比較して,LA群のSB event数は有意に減少した.以上のことから,ラベンダーを応用した嗅覚刺激により睡眠状態が改善し,その結果として,睡眠時ブラキシズムの抑制効果が示された.</p><p>3.PSQIによる主観的な睡眠の良,不良感とは関係なく,ラベンダーを用いた嗅覚刺激によりSB event数は減少する傾向が示された.</p>

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参考文献 (29)*注記

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