画像検査から微小な奇形腫を疑い腹腔鏡下手術を行った卵巣未熟奇形腫に伴う抗NMDA受容体脳炎の1例

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タイトル別名
  • Anti-NMDAreceptorencephalitiswithamicro,undetectableovarianimmature teratoma that led to a definitive diagnosis by laparoscopic surgery

抄録

<p>抗NMDA受容体脳炎は2007年にDalmauによって提唱された若年女性に好発する自己免疫性辺縁系脳炎であり,腫瘍,とくに卵巣奇形腫に随伴することが多い.今回,明らかな卵巣腫大は認めなかったが,抗NMDA受容体抗体が陽性であり,画像検査にて右卵巣にわずかに脂肪成分を疑う部位を認めたため腹腔鏡手術を施行し,卵巣奇形腫の診断に至った症例を経験したので報告する.19歳1妊未産の女性.当院に入院する11日前から感冒症状が出現,入院4日前の夕に異常行動と全身痙攣を認め前医救急搬送となった.頭部MRIに異常所見は認められなかったが,意識障害の進行と不随意運動を認め脳炎が疑われたため当院神経内科へ紹介となった.その後,ICUへ入室し人工呼吸器管理となった.頭部造影MRIで大脳辺縁系にT2WI高信号域を認め,辺縁系脳炎と考えられた.入院後7日目に抗NMDA受容体抗体が検出され,骨盤部MRIとCTを撮像も明らかな卵巣の腫大は認めなかったが,微小な奇形腫の可能性も考慮し当科紹介となった.当科にて再度MRIと造影CTを撮影したところ,右卵巣に明確ではないがごくわずかに脂肪成分を疑う部位を偶発的に認めたため,腹腔鏡下右付属器摘出術を施行し右卵巣内に割を入れたところ,ごくわずかな脂肪組織を含む腫瘍(大きさ3 mm)を認め,摘出標本の病理検査結果は未熟奇形腫grade 1であった.その後,人工呼吸器を離脱し徐々に意識状態は改善した.今回われわれは,微小な卵巣未熟奇形腫に伴う抗NMDA受容体脳炎に対して画像検査を重ねることで微小な病変を疑い,腹腔鏡手術に踏み切り診断と回復に至った1例を経験した.抗NMDA受容体脳炎は意識障害や呼吸障害など重篤な臨床経過をたどることが多く,画像上検出が困難な微小な腫瘍でも本疾患を発症する可能性があることを念頭において,複数回の画像検査実施あるいは撮影条件を変更して画像検査を再検討する必要があると考えられた.〔産婦の進歩73(1):68-72,2021(令和3年2月)〕</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390287142243005312
  • NII論文ID
    130007986998
  • DOI
    10.11437/sanpunosinpo.73.68
  • ISSN
    13476742
    03708446
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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