原発性肺癌に対するリンパ節郭清術:その意義,歴史的変遷と今後の将来

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タイトル別名
  • Lymph Node Dissection for Non-Small Cell Lung Cancer: the Clinical Benefit, History, and Future Perspectives

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抄録

<p>1960年,Cahanが“radical lobectomy”を提唱して以来,肺癌に対する標準手術は肺葉切除以上の肺切除と所属リンパ節の郭清である.所属リンパ節とは,原発巣が存在する肺葉内および葉間/肺門リンパ節と,縦隔リンパ節を指し,縦隔リンパ節郭清の範囲は,原発巣の局在,術中所見によらず,一律に上縦隔から下縦隔までの範囲を郭清する系統的リンパ節郭清が国際的な標準とされている.一方,リンパ節転移様式が解明されるにつれ,1990年代後半以降,本邦では一定の条件の元,腫瘍の局在に応じて郭清効果の高い領域のみを郭清する選択的リンパ節郭清が導入されるようになった.選択的リンパ節郭清の適応,実施条件は施設によって異なるものの,今日の本邦におけるリンパ節郭清の主流となっており,現在,その科学的妥当性を検証する大規模ランダム化比較試験が進行中である.近年では,リンパ節転移の可能性がほとんどないすりガラス成分を主体とする早期肺腺癌も増加しており,このような対象にはリンパ節郭清の省略を伴った縮小手術が選択されるようになっている.今後は画像診断技術のさらなる向上やradiomics,深層学習などを活用したリンパ節転移予測アルゴリズムの開発などにより,リンパ節転移有無の事前予測がより正確に可能となることが期待される.その結果,将来的には,症例ごとに個別化,最適化されたリンパ節郭清が実施されるようになることが考えられる.</p>

収録刊行物

  • 肺癌

    肺癌 61 (1), 3-11, 2021-02-20

    特定非営利活動法人 日本肺癌学会

参考文献 (28)*注記

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