東京の都市地理学研究から考えるアメリカ地誌  [in Japanese] Regional Geography of the United States from the Perspective of Urban Geography in Tokyo  [in Japanese]

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<p>1.はじめに</p><p></p><p> 2020年1月にNHK教育テレビジョン(Eテレ)の「ろんぶ〜ん」において,報告者が筆頭著者となり2016年のE-journal GEOにて発表した秋葉原論文が紹介された.これを受け,本発表では,マス・メディアにおいてこの地理学研究に着目された背景を踏まえ,コロナ禍の今,アメリカ地誌学習で都市を扱う視点や方法について検討する.</p><p></p><p> </p><p></p><p>2.E-journal GEOの秋葉原論文の概要</p><p></p><p> この論文は副題の通り2006年と2013年に行った現地調査に基づく.電子部品・家電・パソコン・アニメ関連やメイド喫茶といった業種・業態の店舗が集積する地区を研究対象とし,その内部の全店舗に入るかホームページを確認するなどにより,提供している商品やサービスを把握した.2006年は報告者により,2013年は報告者と連名の学生2名とともに現地調査を行った.</p><p></p><p>この間,電子部品・家電・アニメ関連店舗の減少や,メイド喫茶等およびアイドル関係店舗の増加,駅前や大通り沿いでの全国チェーン店の集積などがみられた.またこれらについて路線価や店舗の創業年などとの関連を踏まえて,空間的かつ定量的に分析・考察をした.</p><p></p><p> </p><p></p><p>3.Eテレ「ろんぶ〜ん」における秋葉原論文の紹介</p><p></p><p> 当番組は「小難しいイメージだが知的好奇心を刺激する論文の面白さを読み解く」番組である.秋葉原論文が取り上げられた回では,当該論文を参照しつつも,撮影した2019年12月時点の秋葉原を歩き,地域の特徴を理解する内容となっている.撮影時間はおよそ1時間であり,放送はそのうちの15分が使われた.1時間のうちどの部分を放送するかは担当ディレクターおよびプロデューサーに委ねられたため,実際の放送の内容を確認することで,この論文の中でマス・メディアがどの点を面白いと感じ関心をもったかを読み取ることができる.</p><p></p><p> 番組内では,秋葉原の独自の魅力や,その魅力を失わずに発展してきた理由を示すものとして論文が紹介された.店舗の入れ替わりの早さや,同業種が集積しつつも互いに差別化を図ることで多様な業種からなる商業集積を形成するという,秋葉原の伝統的な特徴が示された.</p><p></p><p> 最後に,ゲストの最上もがからは「細かいところで変化していることを文字や表としてわかるのがすごい面白かった」,MCの田村淳からは「色々な街でできる,自分の住んでいる街でやってみたい,こういう研究があることを知れてうれしい,今までのまちの見方と変わる」と感想が述べられた.</p><p></p><p> 撮影終了後,番組プロデューサーからこの論文を扱った理由を聞くと,「街に関する論文を探していた,秋葉原でできないかと考え,この論文を見つけた,汗を感じる論文だったから決めた」という回答を受けた.</p><p></p><p> 今回の経験での報告者の所感は以下の通りである.一つは,まちや地域は人々の生活の舞台であるにも関わらず,地理学において研究蓄積があることを知られていない点である.知られれば興味関心を抱く可能性があるにも関わらず,そのための発信が不十分といえる.もう一つは,まちに関する情報を,詳細かつ定量的に調査・分析している点に関心がもたれ,評価された点である.社会に関する情報をデータとして労力を割いて収集し,その分析結果を基に考察するという科学的なプロセスは,複雑化する現代においては特に重要であり,そのような人材を育成する科目という点においても,地理教育の存在価値があると考える.</p><p></p><p> </p><p></p><p>4.教科書におけるエスニック・タウンの扱いとアメリカ地誌学習での活用</p><p></p><p> 商業地を中心とした「まち」の研究を行ってきた報告者の経験が活かせるアメリカ地誌学習として,エスニック・タウンがあげられる.現状の教科書でのエスニック・タウンの扱いは,地理Bではセグリゲーションやインナーシティの文脈で書かれている部分が多い.地理Aや中学校の教科書においても,エスニック・タウンの民族と母国の文化との関係に関する記述はわずかである.多文化共生社会を構築するには,まずは他者を理解し認めることが重要であり,そのための教材として移民国家であるアメリカ合衆国のエスニック・タウンは有効であろう.民族間での交流の事例からは共生のための方策が,民族間での軋轢の事例からは共生に向けての課題を学ぶことができると考えられる.</p><p></p><p> </p><p></p><p>文献</p><p></p><p>牛垣雄矢・木谷隆太郎・内藤 亮 2016.東京都千代田区秋葉原地区における商業集積の特徴と変化——2006年と2013年の現地調査結果を基に.E-journal GEO11(1):85-97.</p>

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  • Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers

    Proceedings of the General Meeting of the Association of Japanese Geographers 2021s(0), 39, 2021

    The Association of Japanese Geographers

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