多摩川水系浅川の水質に関する水文地理学的研究 (2)

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  • Hydro-geographical Study on the Water Quality of Asakawa River in Tama River System (2)

抄録

<p> Ⅰ はじめに 多摩川水系の浅川では、生活排水による水質悪化が問題視され、様々な研究が行われてきた。しかし、研究の多くは最大の支流である南浅川についての研究であり、浅川水系全体を包括的に研究した例はほとんどない。本研究では浅川水系全体の水質特性を明らかにするとともに、南浅川が浅川本流に与える影響について検討する。Ⅱ 研究方法 今までの研究成果を検討したうえで5月3日より現地調査を開始し、34地点において月一回の継続観測を行っている。現地における測定項目は気温、水温、電気伝導度、pH、RpH、COD、流量である。サンプリングした河川水は研究室へ持ち込み、TOC及びイオンクロマトグラフィを用いた主要溶存成分の分析を行った。Ⅲ 結果と考察 浅川本流のECは、上流部では平均74〜84μS/cm程度である。山間部を抜け、市街地に入ってきた地点からECは上昇し、松枝橋で平均132μS/cmとなる。主要な支流である南浅川上流部では本流上流と比べ値が高く、平均109〜115μS/cmの値を観測した。南浅川では最上流部のECが下流の地点よりも高いという現象が見られた。地下水の影響等により南浅川上流部のECが高く、そこに流入する木下沢のECが低いため、希釈され下流側の値が下がったと思われる。南浅川合流前の松枝橋と合流後の浅川橋とでは平均ECに約15μS/cmの差が生じている。本流下流では平均190μS/cm以上と高い値を示し、11月、12月には240μS/cm以上の値が観測された。支流ではさらに高い値が見られ、山田川の下中田橋では平均302μS/cm、最大で428μS/cm(12月)の電気伝導度が観測され、生活排水の流入が考えられる。多くの地点で11月、もしくは12月に最大値を記録し、降水量との関連性が見られる。pHは下流において高い傾向にあり、生活排水の影響が考えられる。下流で合流する山田川の下中田橋では平均6.8と全体で最も低い値が出た。ここではRpHとの差が平均で0.9あり、地下水の影響が考えられる。本流では上流に行くと値は下がる傾向にあり、最上流では7.2である。変動係数は上流で小さく、下流で大きい。特に最下流部では最大は8.7、最少は7.6と1以上の差がある。最大値が観測されたのは多くの地点で8月であり、降水量が少なかったことが原因とみられるが、同様に降水量が少なかった11月、12月は多くの地点で低い値が見られた。11月、12月のpHが低い理由は地下水の影響であると思われるが、8月の値が高い理由に関しては今後の検討が必要である。TOCは下流において高く、最下流の新井橋では3.0mg/lを記録した。流入する河川の値はそれぞれ異なり、山田川の下中田橋では3.6mg/lと全調査地点の中で最も高い値を示した一方、湯殿川の栄橋では1.0mg/l以下であった。最上流部の値は、北浅川では1.5mg/l、南浅川では2.1mg/lとECやpHと同様に違いが見られ、中流域では低い値であり微生物等の働きによる河川の自浄作用により値が下がったものと考えられる。Ⅳ おわりに 浅川流域では都市域と山間部では違った水質を示しており、ECやTOC値の分布状況にも違いが見られ、水源地の状況や、周辺環境、地質等が関係しているとみられる。季節ごとの水質変化は降水量や地下水の有無等が地点ごとの変動に影響を与えており、今後もさらなる観測により地点ごとの変動の特性を明らかにする必要がある。参考文献 河野はるみ,小倉 紀雄(1987):南浅川におけるアミノ酸の存在量と組成水質汚濁研究,10(8)495-502.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569000755407232
  • NII論文ID
    130008006696
  • DOI
    10.14866/ajg.2021s.0_65
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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