ドムスの隙間から見る関係性の関係

書誌事項

タイトル別名
  • Examining the Relation of Relations through Gaps in the Domus
  • ドムスの隙間から見る関係性の関係 : パナマ東部先住民エンベラのブタ飼育
  • ドムス ノ スキマ カラ ミル カンケイセイ ノ カンケイ : パナマ トウブ センジュウミン エンベラ ノ ブタ シイク
  • Ethnography of Pig Rearing among the Embera of Eastern Panama
  • パナマ東部先住民エンベラのブタ飼育

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抄録

<p>本論では、パナマ東部に暮らす先住民エンベラによるブタ飼育のなかでも、ブタと人のみならずジャガーや吸血性のコウモリなど、複数の存在がかかわる状況の民族誌的記述を、とりわけ飼育活動の場であるブタ小屋に注目して行なう。異なる身体をもつ諸存在が織りなすその状況の記述を通して、関係性の関係という論点から複合的状況を考える視点を示すことを目的とする。その状況にはいくつかの関係性が生じ、関係項となる行為者それぞれの能力に応じたふるまいは、別の行為者の生死に結びつくこともある。これを分析的に記述するために、飼育の場に「据え置かれた関係性」を分析するドメスティケーション論と(生)権力論、それに含まれる免疫論を手掛かりにする。</p> <p>ブタ飼育に複合的状況が生じるのは、ブタ飼育の現場となるブタ小屋が、内部と外部をまたぐ往来に開かれているからである。飼い主は、ブタがある程度の食糧を自分で探し出すことをあてにし、ブタは森に赴く。こうした能力のあるブタは、飼い主の意図しない仕方で小屋の外に出ていることもある。このようにブタ小屋は、外部と内部が完全に隔てられた場所にはならず、隙間のある場所となる。この隙間は、森にいる動物にとってブタ小屋への侵入経路となり、ジャガーやコウモリなどが小屋に到来することを可能にする。その到来は、ブタ小屋の内部にいくつか異なるタイプの死の働きを生む。</p> <p>外部からの脅威に対してブタやその飼い主がとる対応を免疫論から考察することで明らかになるのは、脅威の到来の完全な制御や予防の不可能性である。これはまた、ブタ飼育における関係性の関係を考える手がかりとなる。支配のように理解されやすいブタと人の飼育という関係には、ほかの動物による関係構築によって、それが解消される可能性がつきまとうことになる。</p>

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 85 (3), 416-435, 2020

    日本文化人類学会

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