『羅生門』――存在の物語

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タイトル別名
  • “Rashōmon”: An Existential Story
  • ラショウモン : ソンザイ ノ モノガタリ

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抄録

<p>『羅生門』という物語を芥川龍之介と同時代のヨーロッパ思想の動向のなかで読んでいくとどうなるか。そのために、手始めとして、芥川が実際に読んだ『今昔物語集』のテクストは何だったのかという非本質的な探究から始めた。なぜなら『今昔物語集』をはじめて「美しい生ま々々しさ」に満ちた文学と捉えたのが芥川であり、両者の出会いが気になったからである。次に、芥川と同時代ヨーロッパで展開した生の哲学をハイデガーを中心に論じてみた。言うまでもなく、ハイデガーと芥川とは無関係である。だが、芥川は、存在の生起性に着目したハイデガーと実は近いところにいたのだ。それを最後に『羅生門』の読解で実践してみた。つまり、下人の存在が語り手の呪縛から解放されて生起する物語と捉えてみたのである。私から見れば、芥川・ハイデガー・『今昔物語集』は「生ま々々しさ」で重なり合うのである。</p>

収録刊行物

  • 日本文学

    日本文学 65 (4), 2-12, 2016-04-10

    日本文学協会

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