低酸素微小環境に適応する骨髄腫細胞に対する治療標的分子の探索

  • 池田 翔
    秋田大学大学院医学系研究科 血液・腎臓・膠原病内科

書誌事項

タイトル別名
  • Identification of hypoxia-specific therapeutic targets in multiple myeloma
  • テイサンソ ビショウ カンキョウ ニ テキオウ スル コツズイシュ サイボウ ニ タイスル チリョウ ヒョウテキ ブンシ ノ タンサク

この論文をさがす

抄録

<p>骨髄微小環境は低酸素であり,低酸素応答により骨髄腫細胞は幹細胞性や治療抵抗性を獲得していると考えられている。筆者らは,骨髄腫患者検体および細胞株を低酸素培養し,網羅的遺伝子・microRNA発現解析を行った。低酸素環境で重要な働きを示す因子としてヒストン脱メチル化酵素KDM3A,解糖系酵素HK2,そしてmicroRNA-210を同定した。これらは低酸素誘導因子HIFに制御される。一方,分化の維持や増殖に必要なIRF4やMYCの発現は低酸素環境では抑制される。この事実は,骨髄腫細胞の薬剤耐性・抗アポトーシス能を惹起する制御因子は環境の酸素分圧によって常に変化していることを示唆している。ゆえに,dominant cloneと,低酸素微小環境に適応したdormant cloneを異なる薬剤で同時に治療する相補的治療戦略が,多発性骨髄腫の治癒を目指すうえで重要と考えられる。</p>

収録刊行物

  • 臨床血液

    臨床血液 62 (4), 305-313, 2021

    一般社団法人 日本血液学会

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ