植物ウイルスに対する翻訳開始因子を介した劣性抵抗性

  • 藤本 祐司
    東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻
  • 橋本 将典
    東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻
  • 山次 康幸
    東京大学大学院農学生命科学研究科生産・環境生物学専攻

書誌事項

タイトル別名
  • Recessive resistance to plant viruses by the deficiency of eukaryotic translation initiation factor genes.

抄録

絶対寄生性の病原体である植物ウイルスは,そのゲノムに極めて限られた数の遺伝子しかコードせず,その感染過程において宿主植物細胞の様々な因子を利用している.これらの宿主因子をコードする遺伝子は植物のウイルスに対する感受性に関与することから感受性遺伝子とよばれる.感染に必須な感受性遺伝子が欠損あるいは変異した植物はウイルスに対して抵抗性を示す.このような抵抗性形質は劣性遺伝する特徴があるため劣性抵抗性と呼ばれ,既知の栽培作物においてマッピングされたウイルス抵抗性遺伝子座の約半数を占める.最もよく知られている感受性遺伝子は,翻訳開始因子の一種であるeukaryotic translation initiation factor (eIF)4Eファミリー遺伝子である.翻訳開始因子を介した植物ウイルスに対する劣性抵抗性に関する知見は数多く存在するが,それらの多くは抵抗性という現象の観察のみにとどまっており,翻訳開始因子の機能にまで迫っている研究は比較的限られている.本稿では翻訳開始因子を介した劣性抵抗性について,そのメカニズムが解明された研究に焦点をおいて総説する.

収録刊行物

  • ウイルス

    ウイルス 70 (1), 61-68, 2020

    日本ウイルス学会

参考文献 (45)*注記

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