大腸がんにおけるEMAST(Elevated Microsatellite Alterations at Selected Tetranucleotide repeats)の特徴と臨床的意義

DOI
  • 竹下 美保
    近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻 松江市立病院 ゲノム診療部
  • 浦川 優作
    近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻 兵庫県立がんセンター ゲノム医療・臨床試験センター/遺伝診療科
  • 菅原 宏美
    近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻 兵庫県立がんセンター ゲノム医療・臨床試験センター/遺伝診療科
  • 二川 摩周
    近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻
  • 兼田 宗英
    近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻
  • 冨田 尚裕
    兵庫医科大学 外科学 下部消化管外科 市立豊中病院 がん診療部
  • 田村 和朗
    近畿大学大学院 総合理工学研究科 理学専攻

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Abstract

近年,大腸がんにおけるミスマッチ修復遺伝子異常に起因するマイクロサテライト不安定性(MSI)の発がん経路が注目されている.わが国のMSI検査は主に1塩基から2塩基の反復マーカーが使用されいるが,複製エラーは1塩基から2塩基反復配列のみならず数塩基の反復配列で生じていることもあり,数塩基配列を検索する新しいバイオマーカーとしてEMASTが注目されるようになってきた.本研究は,大腸がんにおけるEMAST検出の臨床的意義を明らかにすることを目的とした. 大腸がん患者168例から抽出した正常組織由来DNAと腫瘍組織由来DNAを用い,フラグメント解析を行った.EMAST解析では,3種類(MYCL1/D8S321/D20S82)のマーカーを用い,2種類以上で陽性を示した症例をEMAST-H(High)大腸がん,1種類のみの場合はEMAST-L(Low)大腸がん,マーカー部位でピーク数の変動を示さない検体をEMAST陰性大腸がんと判定し,EMAST statusとして記録した. EMAST-H大腸がん例は,高齢の男性に多い傾向があり,占拠部位は右側に多く(p=7.67E-5),病理組織型は乳頭腺癌ないし管状腺癌が66.7 %認められ優位である一方,低分化腺癌ないし粘液癌はEMAST-LおよびEMAST陰性大腸がん群と比較して有意に高率であった(p=6.73E-3).EMAST-H大腸がん群は12例中10例(83.3%)でMSI statusを有し,両者は有意に関連することが明らかとなった(p=8.87E-24).一方,APC,KRAS,およびTP53遺伝子異常は低率で特にKRAS異常との関連は認めなかった(p=0.012).EMAST-H大腸がん12例中,MSI-H statusを示さない2例は,いずれもMSI-H大腸がんの典型的な特徴を欠いていた. 大腸がんにおけるEMAST-Hは,MSI-Hとの関連が強いが,現行のMSI検査では特定できない大腸がんも存在する.そのため,MSIとEMASTの指標を組み合わせることが予後の評価や治療方針の決定に有用であると考える.

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