日本の第四紀におけるスギ科樹木の残存と絶滅の過程

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タイトル別名
  • Survival and extinction of the Taxodiaceae in the Quaternary of Japan

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抄録

中部日本の鮮新・更新世堆積物から産出するスギ科大型植物化石の研究史と層位分布を概説し,スギ科樹木の残存と絶滅の過程を議論した。タイワンスギ属とセコイア属は後期鮮新世から前期更新世初頭にかけて中部日本から絶滅し,メタセコイア属とスイショウ属は前期更新世の終わり頃に絶滅した。コウヨウザン属は中期更新世まで生き残り,その後絶滅した。これらの属の絶滅は,海洋酸素同位体曲線に表れている,地球規模の気候寒冷化のステージの前後に起こっている。堆積盆地周辺では気候の寒冷化と同じ時代に山地域の隆起も活発化し,スギ属やヒノキ科,マツ科の針葉樹の増加をもたらした。メタセコイア属とスイショウ属の氾濫原の生育域は,前期更新世後半により活発化した山地の隆起や海水準変動の影響を受けやすかった。山地の隆起によって沖積低地が分断化され,気候と海水準の変化に対応したメタセコイア属とスイショウ属の移動経路が制限されたと考えられる。

収録刊行物

  • 植生史研究

    植生史研究 19 (1-2), 55-60, 2011

    日本植生史学会

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