オイラー方程式における圧力補正法を用いた全音速統一解法に関する研究

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タイトル別名
  • Mach-uniform Approach Using Pressure-Correction Method for Solving Compressible Euler Equations

抄録

現在,数値流体力学による流れ場解析は主に衝撃波を取り扱う圧縮性流れと,密度変動を伴わない非圧縮性流れに分けられている.圧縮性流れにおいて,代表マッハ数が0.3~0.2より小さい場合,密度と圧力の関係が弱くなり数値計算上不安定になり,圧縮性方程式では信頼性のある解が得られないといわれている.また,この様な低マッハ数の流れは密度変動がほとんど流れ場に影響を与えない為,非圧縮性流れと仮定して扱われる.通常,圧縮性方程式と非圧縮性方程式は別々の数値解法で解かれる.これは,圧縮性方程式は全ての物理量を時間発展的に解くことが出来るのに対し,非圧縮性流れでは圧力の伝播速度が無限大である為,圧力について時間発展的に解くことが出来ないからである.つまり,非圧縮性流れまたは弱圧縮性流れと圧縮性流れが混在した流れ場,例えば,エンジン内の吸気,燃焼,排気や航空機の離陸,巡航,着陸といった代表マッハ数の変化が大きな一連の流れをシミュレートしようとした場合,代表マッハ数によって,これらは別々の解法で解かれることになる.従って,非圧縮性流れと圧縮性流れを同一の解法で解くことの出来る統一解法を構築することが出来れば効率的かつ解像度を劣化させること無くシミュレートすることが可能となる.通常,オイラー方程式の圧力の無次元化は,代表マッハ数が自乗で基準圧力に影響を与える.これは代表マッハ数を小さくする,すなわち,非圧縮性流れに近づくにつれて,圧力勾配項が他の項に比べ大きくなる為,運動方程式やエネルギの定義式などにおいて加減算が行われる際に,情報落ちを起こす桁が増加し計算精度が劣化,破綻することを意味する.加えて,圧縮性方程式で陽的時間積分法を用いる場合,通常,低マッハ数では時間刻み幅を極めて小さくしなければならない.一般的に時間刻み幅が小さい方が時間精度は向上するが,極低マッハ数では時間刻み幅は極端に小さい為,時間発展させる際に,時間変化量の計算において情報落ちを起こし計算精度が劣化する.これは硬直性問題と呼ばれ,マッハ数が0.3~0.2より小さい場合,圧縮性方程式では信頼性のある解が得られない原因とされている.近年,この解決方法として一様マッハ数圧力補正法が提案された.本論文では,オイラー方程式に対する一様マッハ数圧力補正法の有効性を検証することを目的としている.この方法では精度劣化の改善として圧力を基準圧力からの差で無次元化する.これにより,無次元化された基準圧力は常に0となり,圧力は基準圧力からの差として表される.したがって,代表マッハ数を下げても基準圧力は上昇しない.よって,低マッハ数流れにおいても,数値計算上安定に計算できると考えられる.なお,解析対象には円柱周り流れを取り上げ,超音速,遷音速,亜音速,極低圧縮性及び非圧縮性流れに対して検証を実施した.その結果,従来のオイラー方程式を用いた解は,マッハ数が0.2以上の場合,物理的に妥当な解を得ることができるが,マッハ数が0.01以下では,非物理的な解となるのに対し,本手法は,超音速,遷音速,及び亜音速流れにおいて,従来のオイラー方程式とほぼ同等の解が得られ,且つ,低亜音速流れ(Mr=0.01)においてはポテンシャル流に近い解が得られた.これにより本手法は超音速流れから非圧縮性流れまで同一の方法を用いて統一的に解くことができることが確認できた.また,従来のオイラー方程式はマッハ数が0.01から安定条件が悪くなるのに対し,本手法はマッハ数を下げても,時間刻み幅が減少しないという結果が得られた.従って本手法は硬直性による時間刻み幅の制限を回避できることがわかった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569944001892480
  • NII論文ID
    130008056239
  • DOI
    10.11421/jsces.2007.20070026
  • ISSN
    13478826
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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