言語の構造制約と叙述機能

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タイトル別名
  • Structural Constraints and Predication Functions in Language

抄録

<p>構造的な制約を追求する従来の統語論・形態論では,構造制約に合う表現を文法的,合わない表現は非文法的としてふるい分けてきた。しかしながら,構造制約に違反しているにも拘わらず当該言語として成立する特異な表現がしばしば観察される。本稿はそのような「例外的」現象として,日本語の外項複合語,英語・日本語の異常受身文,スペイン語の非人称再帰構文,ロシア語等の絶対再帰接辞,日本語の「青い目をしている」構文,マニプル語の能格標示など,様々な言語における統語論と形態論の多種多様な事例を取り上げ,一見,何の繋がりもないように見えるこれらの諸現象に共通する意味特徴を導き出す。その意味特徴とは,主語の一般的・恒常的な属性を表すという性質である。すなわち,従来の構造制約が「いつどこで誰がどうした」という時間軸に沿って展開する出来事ないし状態を表す「事象叙述」に当てはまるのに対して,一般的制約に違反するのに適格となる例外的事例は,時間の流れと関係なく恒常的に成り立つと認識される主語の特性を描写する「属性叙述」に見られる。このことから,人間言語においては事象叙述と属性叙述の両者が意味機能の根幹を形成し,各々が異なる構造制約によって成り立っていることが明らかになる。更に,事象叙述文が属性叙述文に変わると,自動詞化や非人称化が起こって他動性が低下することを観察し,この意味と統語の相関を捉えるために「出来事項の抑制」というメカニズムを提案する。</p>

収録刊行物

  • 言語研究

    言語研究 136 (0), 1-34, 2009

    日本言語学会

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390570862078013568
  • NII論文ID
    130008088344
  • DOI
    10.11435/gengo.136.0_1
  • ISSN
    21856710
    00243914
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
    • KAKEN
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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